キクツキ

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11/23/2024, 12:19:56 PM

○落ちていく○
カサカサと乾いた音を立てて、枯れ葉が降り積もる。
赤や黄色…色とりどりの葉が、木枯らしの奏でるメロディーで舞い踊る。

足元に溜まった落ち葉を爪先で蹴り上げ、君は楽しそうに笑っていた。
転けやしないかとはらはらしている僕の事など気にもしていない。

日が傾き、世界はオレンジ色に包まれる。
そろそろ帰ろうと手を差し出せば、小さな手で握り返された。
目を擦る君を抱き上げて歩き出せば、眠りに落ちるのにそう時間はかからないだろう。

僕の小さなお姫様。
いったいどんな夢をみるのかな?

11/22/2024, 12:37:27 PM

○夫婦○
冬の朝の肌を刺すような冷たさに身震いをしながら、身体を起こす。
隣の主人を起こさないように布団から抜け出し、キッチンへ。
ヒーターのスイッチをOn。
ヤカンに水をいれてお湯を沸かす。立ち上る湯気を横目に、マグカップにインスタントコーヒーと紅茶のティーバッグをセットした。

久しぶりの夫婦揃っての休日。
何かを計画している訳ではないが、なにもしないのも勿体ないような気がする。

「おはよ」
欠伸を噛み殺しながら主人が顔を出す。
袋から食パンを2枚取り出してトースターにセット…冷蔵庫を開けてバターとジャムを取り出して、くるりとこちらを振り向いた。
「今日は目玉焼きの気分だなー?」
にこにこと笑う顔にこちらも笑顔になるのを感じながら、冷蔵庫から卵を2つとベーコンを取って貰う。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」

フライパンを温めてベーコンを敷く。程よく火が通ったところへ卵を割り入れ、白身が固まってきたら蓋をして火を止める。
沸かしたお湯の残りでカップスープを入れている主人に、今日の予定を尋ねてみた。

「んー…そうだなぁ。天気も良さそうだし、写真でも撮りに行こうか」

出来上がった朝食を運びながら、行き先へと話題は移っていく。
カメラを持ってどこへ行こうか?

今日はまだまだ始まったばかりだ。

11/22/2024, 8:15:10 AM

「君のことは今でも好きだよ。でも、別れてほしい」
ーごめんー
そう言って頭を下げる彼を、私はぼんやりと見つめていた。
昨日まで普通だったのに。一緒に出掛けて、ふらっと入った喫茶店の料理が美味しくて。
送って貰って、別れ際のキス…何も変わらない、いつも通りのはずだったのに。
思考が纏まらない。どうしたら良いのかも分からない。
震える唇から、やっとのことで紡いだ言葉は
驚くほど静かだった。
「…どうして」
ぴくり。彼の肩が震える。
ゆっくりと身体を起こし、私を真っ直ぐに見つめる瞳には
苦悩の色が浮かんでいた
「…出来るなら、君とこのまま…恋人のままで居たい。でも、無理なんだ」
深く、息を吐く。永遠にも感じるような一呼吸…彼は、苦しそうに言葉を紡ぐ。
「昨日、母に聞いた。君が…俺の妹だって。産まれてすぐに父親が居なくなって、母一人では育てられないから…親友の養女にして貰ったって」

…こんなに好きなのに。愛しているのに。
手を伸ばせば、触れられるのに。
何を言っても、何をしても…彼を苦しめるだけ。
頬を熱いものが伝う。いつもなら拭ってくれる指先も、今日は震えているだけだ。

「…わかった」
絞り出した私の声も、震えていた。
「今まで、ありがとう。愛してくれて、ありがとう」
ー幸せでしたー
精一杯の笑顔は、上手く笑えて居なかったかも知れない。それでも、これ以上顔を合わせていれば…欲が出てしまう。
「…さよなら。幸せに、なって」
踵を返し、一歩。彼は動かない。
距離にして2m。私の背中を彼の言葉が追ってきた。
「…愛していた、よ。どうか、幸せになって」


振り返ることは出来なかった。
この胸の痛みは…いつか時間が癒してくれるのだろうか