夏休みが明け、新学期が始まった。
夏休みの間に会えなかったクラスメイトたちと宿題が終わらなかっただの、海外へ旅行に行っただの他愛も無い話で教室内が盛り上がる。
そこへ担任が入ってきて、お決まりのセリフで生徒たちの気を引き締めさせ始業式を卒なくこなしていった。
そんな中ぼくは1学期の間に話せなかったクラスで最も人気のある女子、中新井サヤカさんと登校中に何かのキッカケでLINE交換ができて有頂天になっているところだった。
ぼくたちの学校は校則が厳しく学校で授業を受けている間はスマートフォンを貴重品として預けなければならない。
LINEを交換してすぐに貴重品係から回収されてしまい、未だに彼女へスタンプさえ送れておらずどんなものを送ろうか、それとも無難な挨拶か、いっそのこと休日に遊ぼうと誘ってみるべきか……。
こんなことばかりを悶々と考え時間は過ぎていくのだった。
お題:開けないLINE
【皆さま、ご覧ください! こちらが自己修復機能を搭載したヒューマノイドロボットです! こちらは○○大学と○○会社が共同制作した…】
画面の中では世界で初めて破損箇所を自己修復できるというヒューマノイドが華々しい登場をしているところだった。
その性能を見せつけるため、説明役が手に持ったハンマーで腹部を殴りつけると観客は恐怖心をはらんだ叫び声をあげた。
まるで車同士のクラッシュのような音が響いた後、殴られた部分は破損し人間の神経回路に似たおびただしい量のケーブルが剥き出しになっていた。
少女のような風貌をしたヒューマノイドは無表情のまま、その部分に両の手を当てて直していくとものの数分も経たないうちに破損されたとは思えないほどキレイになっていた。
それを見ながら僕は隣に座る博士に声をかけた。
「僕にもあのような機能があれば、博士にもっとたくさんの研究費が渡されていたんでしょうか」
何故なら博士の暮らしぶりと来たら裕福とはいえないようなものだったので、僕についての何某かがこのように発表されればいい方向に向かうんじゃないかとの考えからだった。
問いかけられた博士は困ったような顔で笑って
「良いのですよ、もう私はお前に感情をプログラミングできた瞬間に満足してしまいましたから」
そう言ったのだった。
僕はヒューマノイドとしては不完全かもしれない。
人間の役に立つことこそロボットの本質のはずなのに、博士の言葉に喜んでしまっていたから。
お題:不完全な僕
君の香りがする香水。
初めて買ってみたんだよ。
わたしにはちょっと大人っぽすぎかな。
でも、君の香りに包まれたかったの。
君はわたしの世界にはいない人だから。
だから君がこの世界に来てくれますようにって、願掛けの気持ちも込めて買ってみたんだ。
ラストノートは君の肌の温もりをイメージしているんだって。
毎日わたしを抱きしめてね。
お題:香水
俺たちの間に言葉なんていらねえ!
ただ澄んだ味わいの酒を入れたグラスで乾杯だ。
それが俺たち酒飲みの作法ってもんだろ?
お題:言葉はいらない、ただ…
もう最悪!
まだ予定日じゃなかったのに急に来るんだもん。こういう時って、なんでアタシは女なんかに生まれちゃったんだろうってなる。
下着は赤く染まってるのに気持ちはすっごいブルー。
しかも最悪なのが彼氏とデート中の時にいきなりなって学校が違う彼氏と久しぶりに会えたのに、それどころじゃなくなって泣く泣くお開きにした。
自分の部屋で腹痛に耐えながらクッションを抱えていると家のチャイムが鳴った。お母さんから手が離せないから出てくれと言われて、重たい体をひきずり玄関でインターホンの画像を確認するとアタシの親友であるメグが制服姿で立っていた。
「メグ、どうしたの? 」
「今日は補習だったんだ。終わったらアンタと駄弁ろうと思ってさ」
約束はしてなかったけど、アンタ今日は家にいそうな気がしたから。
そう言ってメグは手土産のスナック菓子やジュースが入ったビニール袋を見せてくれた。
正直お菓子を食べたりするのも気持ち悪いくらいお腹が痛かったけどメグと一緒におしゃべりしていたら少しだけ気が紛れた。
お題:突然の君の訪問