アッシュ

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【皆さま、ご覧ください! こちらが自己修復機能を搭載したヒューマノイドロボットです! こちらは○○大学と○○会社が共同制作した…】

画面の中では世界で初めて破損箇所を自己修復できるというヒューマノイドが華々しい登場をしているところだった。
その性能を見せつけるため、説明役が手に持ったハンマーで腹部を殴りつけると観客は恐怖心をはらんだ叫び声をあげた。
まるで車同士のクラッシュのような音が響いた後、殴られた部分は破損し人間の神経回路に似たおびただしい量のケーブルが剥き出しになっていた。
少女のような風貌をしたヒューマノイドは無表情のまま、その部分に両の手を当てて直していくとものの数分も経たないうちに破損されたとは思えないほどキレイになっていた。

それを見ながら僕は隣に座る博士に声をかけた。
「僕にもあのような機能があれば、博士にもっとたくさんの研究費が渡されていたんでしょうか」
何故なら博士の暮らしぶりと来たら裕福とはいえないようなものだったので、僕についての何某かがこのように発表されればいい方向に向かうんじゃないかとの考えからだった。
問いかけられた博士は困ったような顔で笑って
「良いのですよ、もう私はお前に感情をプログラミングできた瞬間に満足してしまいましたから」
そう言ったのだった。
僕はヒューマノイドとしては不完全かもしれない。
人間の役に立つことこそロボットの本質のはずなのに、博士の言葉に喜んでしまっていたから。


お題:不完全な僕

8/31/2022, 4:21:46 PM