#もしもタイムマシンがあったなら
ぼろぼろと泣きだすあめてゃ
「は、え、だいじょ、、」
でも、泣いている瞳の奥はどこか冷たくて、全てを察したかのような、何かを諦めているような、
私が、気持ちを伝えたのが間違いだったのか
「あめてゃねぇ、天使だから」
「…またひとりだけ置いてかれちゃうの嫌」
「え、?」
言ってる意味が分からなくて、ただただ混乱してしまって
「もう、何年生きたか分かんないや」
「せん、、ごじゅうきゅう、ろくじゅうかも。あんまり覚えてないけど」
涙で濡れた頬を服の裾で軽く拭いて、あめてゃはいつも通り笑う
「だから…ね?」
察してくれ、とでも言いたげに首を傾げて私を見る
「…置いてかないよ?」
「んー、なつみちゃんは、そう思ってくれるかもしれないけどね、人は残酷なことに年月には抗えないんだよ、」
「だって、いつもそうだったよ?」
笑ってるけど、いつものあめてゃの笑顔じゃなくてついびくりとしてしまう
「…、っじゃあ、また会いに来るから」
「死んでもまた生まれ変わってあめてゃに会いに来るよ」
あめてゃの手を握って、ぎゅっと力をこめる。突然のことに驚いたのか、目を見開きかたまるあめてゃ
「…」
「また、同じこと言う…」
ぼそっと小さく呟いて
泣きそうな、嬉しそうな、なんとも言えない顔であめてゃは私を見て笑う
…もしも遠い昔に行けるなら、置いていかれて泣いた幼いあめてゃを抱きしめることができるのに
#今一番欲しいもの
「今1番欲しいものなに?」
「いま…?」
うーん、と少し考える
急にどうしたのかな。誕生日?もう1ヶ月前に終わってしまってるけど
それとも普通になにかくれるのかな?なんで?
と、考え込むにつれて『なんで欲しいものを聞いてくるのか』という思考に入っていく
「こさめー?」
「ん、あ、ごめん」
「えー、でもないかなぁ…、」
こさめが返すと、困ったように笑うらんくん
「ものじゃなくてもいいよ」
………ものじゃなくても、か
らんくんの頬に指が触れる。らんくんがこさめにくれるよりも先に、いまこさめが奪ってしまえるけど
「…じゃあ、休日が欲しいな」
「えーwなにそれ、俺も欲しいよ〜」
こうやって、ちゃんと"ダメなこと"だと理解してしまってるからいけないのかな
それに、結局こさめのそばに居てくれる訳がないって分かってるから
互いに愚痴を言い合ってる2人だけれど、いるま先生はきっとらんくんを手放さないし、らんくんもきっといるまくんのそばを離れない
…あぁ、もっと強欲になって、力づくで奪えばいいの?…それでもどうせ、結局は元に戻ってしまうんだろうけど
#私の名前
「ねぇ、みことちゃん」
「………え?」
「ふふ、どうしたの?そんな驚いた顔しちゃって」
「恋人だから、名前を呼ぶのは普通でしょ?」
「いや、、え、っと…」
さっきまで笑っていた顔が歪んで、泣きそうな顔で俯いてしまうみことちゃん
「あ、みことは本当の名前だったね」
「俺の前では偽名だったの、忘れてた」
「ちが、」
分かりやすく動揺する姿に思わず笑ってしまう
「あははっ、大丈夫だよ。そんな怖がらなくて。怒ったりしないよ?」
「お互い様だからね」
#空を見上げて心に浮かんだこと
「あ、晴れてるっ」
ぐっと伸びをしてから、雲ひとつない空と同じ色をした瞳を細めて笑うこさめ
梅雨の妖精らしいが、こさめを見て最初に思い浮かんだのは快晴だった
笑った顔も、空気を一瞬で変えてしまえる明るさも、淀みのない空色の瞳も、太陽の光が反射して輝く耳元のイヤリングも、連想されるのは曇った空じゃなくて快晴で
でも、時々見えるこさめの深いところは、快晴とは程遠く曇った空という訳でもなく、ただ深い闇が広がっているような気がする
空色の目も黒々と濁って、いつもの明るさも消えて、そんなこさめを俺が救い出してあげることが出来るのか、なんて思っていた時もあった
けど、これはこさめの一部で、切っても切り離せないもので、だからどうしようもないんだなという事を早いうちに悟った
だから、俺はただこさめのそばで見ていることしかできない。でも、そばで一緒にいてあげればいいかな、なんて
俺だったら、そうされるのが1番安心するだろうなと思ったから
#終わりにしよう
「今でも好きだし、たぶんこれからも好きだよ」
そう、笑って手を絡めてくるすちくん
「ぅえ、、じゃ、なんで…?」
困惑して、涙がでて、すちくんの手を握りしめる
離したくないのに
「好きだけどね、うーん、、なんて言うのが正解かな」
困ったように眉を下げて、また笑う。
なんで笑うの?俺と離れるのが、嫌じゃないの、?
俺の心を読んだのか、すちくんは優しくて、安心する笑顔で俺の額に唇をつける
小さなリップ音と共に、額の感触が消える
「好きだけど、終わりにしないとかなぁって」
理解ができなかった。何を言ってるのかがよく分からなくて、とりあえずすちくんの事を離さないよう、さらに強く握りしめた
「ねぇ、みことちゃん」
すちくんの冷たい手が、俺の頬に触れる
すちくんは、ずっと笑顔を崩さなくて、俺は、ずっと泣いてて
さっきよりも優しくて、安心してしまうすちくんの笑顔をみて、つい握っていた手を緩めた
すちくんの手が俺から離れてやっと、俺からすちくんの手を離してしまったことに気付く
「ぁ゙…」
離れて、離れて、どこかへ行ってしまいそうなすちくんに手を伸ばす
それでも結局届かなくて、自分で届かせないようにしていて、俺は結局
『すちくんに嫌われたらどうしよう』
という恐怖に縛られているだけだったのかもしれない。今あの手を取って、すちくんが拒否したら、それを見たくなくて、知りたくなくて、ずっとこの場ですちくんから助けてくれるのを待つだけで
…あ、でももう終わりにしないと、なのか
嫌われたくない、なんてもう気にしなくていいはずなのに