#太陽
「太陽は手が届かないんだよ」
そう意味深に笑うらんらん
「なんでか分かる?」
「えー、遠いし、熱いから…?」
俺が言うと、らんらんは笑う
「ちょっと、笑わんといてよ!」
俺がそう言っても、笑って笑って、涙までだすらんらん
「ごめんごめんw合ってるけど、思ってたのと違ったからw」
「まぁ、みことらしくていいんじゃない?w」
「なんなんそれ…」
「みこちゃんは可愛いねってこと。あ、俺もう家帰るね、やることあって」
「あ、うんっ」
…らんらんは言い出した割に正解を出してくれない
のらりくらりとしていて、なんというか…ずるい気がするのは俺だけかな
#鐘の音
授業の終わりを告げる鐘が鳴り、そのすぐ後に扉を開ける音とクラスの女の子達の黄色い声がして振り返る
「すっちー!」
爽やかな声に見合う笑顔で俺を呼ぶみことちゃん
周りから王子王子、と持て囃されているが俺からしたら汗を流してまで俺のクラスに来てくれる姿は可愛らしい犬のように思える
「みことちゃん、大丈夫?汗かいてるよ」
そばに寄ってみことちゃんの額の汗を拭う
えへへ、と言って笑うみことちゃんが、いつもこんなに走ってまで来てくれるみことちゃんが、本当に可愛らしい
#病室
「大丈夫?」
窓の外をぼんやりと見つめていると、後ろから声が聞こえて振り返る。こさめが笑って問いかけ、そばにりんごを置く。でこぼこで明らかに最初見せてくれたものより小さなりんご
不器用ながら必死に剥いたのだろう
「ありがと」
「病院、たのしい?」
そう、無邪気そうに笑うこさめを反射的に睨む
「ちょっとー、なんで睨むの?こさめがなつくんを病院に連れてきてあげたのに」
「その俺を病院行きの体にしたのはお前だろ」
「んー、」
こさめが青紫になった俺の腕をぐっと指で押さえつけ、つい小さく悲鳴をあげる
「あははっ、そうだね、ごめんね」
そう言うと同時に俺の首に手を伸ばしてくるこさめ
危ないと頭で考えるよりも先にこさめから逃れようと体が動くが、病院に入れられたばかりだからなのか、元からなのか、こさめの何倍も遅い
「あ゙ッ」
「ごめんとは、思ってるよ」
首を絞められ押されて、体が窓の外にでる
このまま押されたら、このまま意識を失ったら、このままこさめが身を乗り出したら。その後の事を考えたくなかった
「ぢょ、こ"さっ、」
「…あー、やっぱり、なつくんって」
「………面白いくらいにやさしいね」
#友情
恋人という関係は、あまりに脆いと聞いて
友達という関係は、強いものだって聞いて
じゃあ、ずっと一緒にいるなら恋人になるよりも友達の関係の方がいいなって、
世間知らずだった俺は思ってしまった
嫌いな訳じゃなくて、好きだったのに。恋人になるのが嫌だった訳でもなかった
けど、別れたら一緒に居られないかもという考えが頭の中にあったから。
ずっと一緒に居たいからこそ、友達のままでいるという道を選んだのに
#花咲いて
「んーっ、あー、終わったおわったっ!!」
長い時間をかけて咲いた花は、あっという間に散ってしまうものなんだ
そういうものだって分かってるから、花の影を追わなくて済む。
………
「悲しい訳では、ないんだけどねぇ…」
ちゃんと、好きではあったんだよ