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9/30/2025, 9:53:04 AM

白黒テレビのあった時代は
現実も白黒だったのだと
無邪気に信じていた事がある
だからいつかの未来の子供も
私達を指して言うだろう
この時代の人たちは
みんな平面だったのだと

‹モノクロ›


星も生命も祈りの声も
途絶えてしまう朝がある
歌も平和も苦しみの時も
止み静まる夜がある
愛も言葉もダイヤモンドも
誓いの永久には程遠い
だからせめて一つだけ
君と僕との有限に
誠実であるだけを
失われるまでの約束を

‹永遠なんて、ないけれど›

9/28/2025, 8:45:24 AM

君を悲しませるようなモノ
何でも無くしてしまうから
君を悲しませるようなモノ
何でも失くしてしまうから
君を悲しませるようなモノ
何でも亡くしてしまうから
だから教えてと問うたのに
君はただ首を振り続ける

‹涙の理由›

9/27/2025, 9:54:49 AM

夜目遠目傘の内、とは人が美しく見える条件だという。
それはつまり見えない部分を自然補ってしまう機能だと。
そうカップを傾ける、重たい前髪の奥に僅か見える目は、美しく光っているようだった。
黒い水面に映るのは、熱さに窄めた唇なのに。
白い湯気の向こう側、赤い月が笑うようで。
その本性を知って尚有効な、不思議な不可視のベールを一枚、空のカップに注ぎ足した。
本日の待ち人は、どうにも遅いようだ。

‹コーヒーが冷めないうちに›


ぱらぱらと
めくるページの裏表
光年遥か
言葉は見えず

‹パラレルワールド›


短い針と長い針
ある時同時に動き出す
短い針はゆっくりと
長い針は忙しなく
それでも何度も影を重ね
同じ時間を進んでいく
短い針はゆっくりと
長い針は忙しなく
離れていく距離を進んでいく
短い針と長い針
ある時一本外れ落ちた
落ちて砕けて消えていった
一本の針は動いている
それでもまだ止まれずに

‹時計の針が重なって›


この手を取って、共に行こう
煌めく森の中、鮮やかな花畑へ
この手を取って、共に行こう
賑やかな街中、心弾む時間へ
この手を取って、共に行こう
静かな帰り道、暖かく眠るように
どの手でも良い、共に行こう
君のために伸ばした手を
どれでも良い、取ってほしい
どうか、一人でいかないで
全て抱えていかないで

‹僕と一緒に›

9/23/2025, 12:56:04 AM

雲を突き抜けた先には綺麗な青空があると聞いた。
だから空を飛べるようになって真っ先に雲を抜けてみようと思った。
あまり高く飛びすぎてしまうと大気圏で燃えてしまうと聞いたから、少し雲の中を楽しむくらいの速度で。
どうせなら真っ暗な空の日がいいと思い、嵐の日までを楽しみに数えた。

今にも雨の降りそうな暗天にわくわくと、地上を離れ雲の中。ぱちりぱちりと雨粒が肌を打つ。
閃いた光はいよいよ雲の上と
思う間もなく雷鳴

‹cloudy›


虹には雄と雌とがあって運が良ければ二重に見えると
昔々に図鑑で読んだ
二つの虹は色の順が逆になるから不思議だと
昔々に図鑑で読んだ
虹の色順を問う論争に
図鑑をぶつけても良かったけど
残念ながら現在禁書
誰も真実に触れられない

‹虹の架け橋🌈›


自分だけが見られる部屋を作れると
最初に裏技として教わった
スタンプのお試し 文章の推敲
案外に使い手は多かった
時々真似て送信する
自分宛だけのメッセージ
来年 五年 あるいは十年後の
自分宛にしたメッセージ
   に
返信が来た昨日の話

‹既読がつかないメッセージ›


秋の色を問うた時
 死に逝く葉の色を挙げること
秋の色を問うた時
 繋げぬ実の色を挙げること
秋の色を問うた時
 静まる風景ばかりのこと
秋の色を問うた時
 夏だけの君はもう居ない

‹秋色› 


明日に世界が終わるなら
君と一緒に何処へ行こう
懐かしい街の風景か
未来に望んだ光景か
明日に世界が終わるなら
君と一緒に何を食べよう
一生一度の贅沢か
慣れ親しんだ晩餐か
明日に世界が終わるなら
君と一緒に何をしよう
積み上げた趣味の清算か
温もりに満ちた安寧か
明日に世界が終わるなら
明日に世界が終わるから
君と一緒にいたいから
どうかかえってはくれないか
かえってきてはくれないか

‹もしも世界が終わるなら›

9/18/2025, 10:02:35 AM

「ごめん、解けたわ。先行って良いよ」
「またぁ?不器用過ぎない?」
「縛るの苦手なんだよ」
「紐靴止めろよソレ。スリップインだかなんだかあるでしょ今」
「家系の問題で、紐のない靴履いたらいけないことになってて」
「なにそれメンドイ。じゃあアレは?紐とは別に着脱チャックみたいなのあるヤツ」
「『毎回縛る』、が要るんだって」
「めんっどくせー!従うの止めろよソレ」
「まぁ、コレで助かることも多いから…」
「まじで?」
「そうそう。例えば、」

「それ以上行くと崖だよ、気を付けてね」

「……ちぇ、ばれたか」

‹靴紐›


電話を掛けても
手紙を送っても
メールをしても
家を訪ねても
籤を引いても
カードを返しても
こっくりさんに尋ねても
AIに尋ねても
毎日想っても
徹夜で考えても
なんてこたえればよかったのか
どうしてもずっとわからない

‹答えは、まだ›


街中で友人を見掛けた。
旅に出ると言い出し数年、
行方不明になっていた幼馴染だ。
思わず声を掛けると、
目を見開いてから何処か
安心したような笑顔になった。
何処に居たのかと問うと、
言ってみたかった場所全てと。
いつまで続けるのかと問うと、
後少しでおしまいと。
ならば元気の確認がてら付き合うかと、
歩を並べ行けば子供のようで、
辿る道筋も懐かしい。
高校はまだ学生が居たが、
中学はとうに廃校舎、
小学校に至ってはどこぞの企業になっている。
見覚えのある、全く知らない道筋を
辿り、歩き、歩き、
昔住んでいたアパートを通り過ぎ、
バスをいくつか乗り継いで、
空き地の真ん中でその足は止まった。
「昔、丁度生まれた頃」
「此処に産院があったんだ」

‹センチメンタル・ジャーニー›


「ねぇこれどう思う?」
「ん?……うっわウッザ」
「同意ー。なんで意味無い絵文字使うんだろうね」
「それな。意味の補足とかならまだしも、コレじゃ『頭が頭痛で痛い』みたいなもんだし」
「んー……あ、親近感って説あるらしい」
「馬鹿の所業過ぎる」
「ほんそれ過ぎる」
「大体さぁ、いい年してコミュに親近感とかコミカルとか要らんのよ。知性を見せろ知性を」
「エ…エスプレッソ?」
「エスプリ」
「そうそれ」

‹君と見上げる月…🌙›

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