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「ごめん、解けたわ。先行って良いよ」
「またぁ?不器用過ぎない?」
「縛るの苦手なんだよ」
「紐靴止めろよソレ。スリップインだかなんだかあるでしょ今」
「家系の問題で、紐のない靴履いたらいけないことになってて」
「なにそれメンドイ。じゃあアレは?紐とは別に着脱チャックみたいなのあるヤツ」
「『毎回縛る』、が要るんだって」
「めんっどくせー!従うの止めろよソレ」
「まぁ、コレで助かることも多いから…」
「まじで?」
「そうそう。例えば、」

「それ以上行くと崖だよ、気を付けてね」

「……ちぇ、ばれたか」

‹靴紐›


電話を掛けても
手紙を送っても
メールをしても
家を訪ねても
籤を引いても
カードを返しても
こっくりさんに尋ねても
AIに尋ねても
毎日想っても
徹夜で考えても
なんてこたえればよかったのか
どうしてもずっとわからない

‹答えは、まだ›


街中で友人を見掛けた。
旅に出ると言い出し数年、
行方不明になっていた幼馴染だ。
思わず声を掛けると、
目を見開いてから何処か
安心したような笑顔になった。
何処に居たのかと問うと、
言ってみたかった場所全てと。
いつまで続けるのかと問うと、
後少しでおしまいと。
ならば元気の確認がてら付き合うかと、
歩を並べ行けば子供のようで、
辿る道筋も懐かしい。
高校はまだ学生が居たが、
中学はとうに廃校舎、
小学校に至ってはどこぞの企業になっている。
見覚えのある、全く知らない道筋を
辿り、歩き、歩き、
昔住んでいたアパートを通り過ぎ、
バスをいくつか乗り継いで、
空き地の真ん中でその足は止まった。
「昔、丁度生まれた頃」
「此処に産院があったんだ」

‹センチメンタル・ジャーニー›


「ねぇこれどう思う?」
「ん?……うっわウッザ」
「同意ー。なんで意味無い絵文字使うんだろうね」
「それな。意味の補足とかならまだしも、コレじゃ『頭が頭痛で痛い』みたいなもんだし」
「んー……あ、親近感って説あるらしい」
「馬鹿の所業過ぎる」
「ほんそれ過ぎる」
「大体さぁ、いい年してコミュに親近感とかコミカルとか要らんのよ。知性を見せろ知性を」
「エ…エスプレッソ?」
「エスプリ」
「そうそれ」

‹君と見上げる月…🌙›

9/18/2025, 10:02:35 AM