嬉しいとき
吃驚したとき
心から感動したときに
ヒトは泣くのだと、涙が出ると教わった
だから
だから
知りたくなかった
「悲しいときに涙が出るなんて、
そんなの知らなかった!」
‹なぜ泣くの?と聞かれたから›
昔から裸足の音が聞こえた。
誰も歩いていない場所のことだ。
近付いてきている、と言うと、
君は決まって鼻で嗤った。
そんなモノは聞こえないと、
袖掴む手を振り払った。
近付いてきているのに。
構ってちゃんは嫌いだと、
開いた口を突き飛ばした。
近付いてきているのに。
毎年、毎夏、毎日、
近付いて来ているのに。
ああ、ほら、後ろに、
君の、
‹足音›
8月32日のバグとは有名なモノで
大概は不変の日常がおどろおどろしく崩れる様で
さりとて蝉の音は五月蝿いままに
日照りの青を見上げていた
終わりは来るのかい、と問えば
わたしが望まない限りは、と
終わりたいのか、と問われれば
続いてくれるならそれで良い、と
互いに願った時間ならば
優しい永遠のままで居られるだろうか
一先無用の長物を
川に流すところから
‹終わらない夏›
空を飛んでみたいのだと
案外正気の目が言った
雲を嵐を突き抜けて
地上の全てを見れる程に
天の国に問には行かず
地の底に問うことも無く
純粋な真実だけで良いと
狂えなかった目が言った
‹遠くの空へ›
大体の感情は言葉に出来て、
記号はその補助をしてる筈。
記号も重ね組み合わせ、
意図を複雑に織り込める。
それでも意味が足りないなら、
それでも表し足りないなら、
「それはきっと、現したらいけないモノなんだ」
‹!マークじゃ足りない感情›
雪がちらちら降っている
あぁでもあの日は夏だった
木漏れ日ゆらゆら揺れている
あぁでもあの時は夜だった
星がきらきら瞬いている
あぁでもあの日は曇だった
景色くらくら回っている
あぁでもまだいき続いている
‹君が見た景色›
それはことばのカタチをしていた
きっと優しくきっと暖かな
笑顔を生むようなことばだった
ソレを声にしたかった
口にして伝えたかった
優しく撫でて暖かく包むような
笑顔を見たいひとがいた
けれど
否定しか紡げないこんな口じゃ
肯定を出来ないこんな脳じゃ
ひとを笑顔に出来やしない
ひとを幸せに出来やしない
‹言葉にならないもの›
アスファルトで目玉焼きが作れそう、なんて
少し前まで比喩だった
朝の打ち水に涼むことも
少し前まで正しかった
簾に風鈴に団扇だけで
過ごせていたことも
気温に名の付く日が少なかったことも
少し前まで、ちょっと昔まで
本当に真実だったのにね
‹真夏の記憶›
白いクリームがとけている
黒い行列が並んでいる
茶色のコーンが転がって
無情に誰かが踏み潰す
白いクリームがとけている
赤いいちごが滴って
茶色のチョコと交わって
無為に無情に汚れてく
白いクリームがとけている
白い布地にとけている
白い肌にとけている
黒い にとけている
‹こぼれたアイスクリーム›
どうせ離してしまうならば
はじめから手を伸ばさないで!!
‹やさしさなんて›
ふわり髪が舞い上がる
青い空に羽が舞う
白い雲は足早に
山の向こうへ消えていく
ふわり花弁が舞い上がる
青い空に色が舞う
灰色の煙は幻のように
形残さず霧散する
空の手の中風が吹く
空っぽのまま風が吹く
‹風を感じて›
憧れていた街だった
並んで覗いた店先で
「夢みたい」と呟いた
「夢だよ」と目が覚めた
知りたかった本だった
並んで開いた頁の上
「夢みたい」と呟いた
「夢だよ」と目が覚めた
見たかった服だった
並んで歩いた絨毯に
「夢みたい」と呟いた
「夢だよ」と目が覚めた
暗く沈んだ部屋だった
向かい合えずに俯いた
「夢であって」と呟いた
声はしなくて目を閉じた
‹夢じゃない›
思いのままに心のままに
足の向くまま進んでいこう
その道中がどれほど酷く
ゴールがどれほど遠くとも
願うままに祈るように
瞳の向くまま進んでいこう
その年月がどれほど永く
生命をどれほど費やすとも
進むままに進むままに
選んだままに進んでいこう
其処に辿り着きたいなら
その姿を望むなら
‹心の羅針盤›
「いってきます」に「いってらっしゃい」が返ること
「ただいま」に「おかえり」が返ること
当然みたいな祈りであって
決して必ずの契約じゃない
「また明日」に「また来週」に
「また来年」に「またいつか」に
当たり前みたいな言葉が
さいごになる時があること
永遠も絶対もこの世に無ければ
希望も願いも形の無いこと
‹またね›