「わたし別に、難しい事言ってないわ」
「不可能でも非現実でも何でもない」
「理論でも実践でも出来ることよ」
「材料も時間も十二分に用意できてる」
「だから。貴方は頷くだけでいいの」
「そうしたら全部全部終わるから」
「ね、」
「赦してよ」
「貴方の為の事をさせて」
「……頷いてよ、一度でいいの」
‹叶わぬ夢›
甘い香りがした
美しい人だった
微笑み手招かれ
踏み出そうとしかけた足元が
断崖絶壁なのは知っていたし
向こう岸までの断絶が
どうしても届かない場所なのも
間違いようもなく分かってた
すぐ隣で踏み外し墜ちて逝った者も
どうにか飛ぼうと消えて逝った者も
腕引き止めようとする指の強さも
確かに知っていた分かっていた
それでも呑み込む空気の味を
目を逸らせぬ輝きを
確かに分かっていた
‹花の香りと共に›
足を止めた
先行く友が振り返った
首を振った
戻って来た友は違う道へ手を引いた
口を開いた
明るさを装い友が歌った
衝撃音
ああやはり
友が手を引いた
何処へ行こうかと手を引いた
楽しい予感もきっとあると
予知の先でも友は居た
‹心のざわめき›
君が居ないことを知っていた
自ら隠れたことを知っていた
君が居ないことを知っていた
一人旅立ったことを知っていた
君が居ないことを知っていた
秘密を暴いたから知っていた
君が居ないことを知っていた
でもそれが
君を諦める理由にはならない
‹君を探して›
地域で一番
国で一番
史上最高
空前絶後
世界一
銀河一
宇宙一
一番
一番綺麗だった
僕には、見えなかったけど
‹透明›
始めましてじゃなかった
多分、きっと
差し出された左手は自信無く揺れて
知っていた、淋しいくらい
涙が溢れた
唇が動いた
それでも、誰か分からなかった
安心したみたいに笑っていた、
君の名前を呼べなかった
伝えたいことが
あった、
はず、
で、
‹終わり、また初まる、›
石屑と氷粒を辿って行こう
鋼片と記録を辿って行こう
重たい力を引き千切って
君の生きた大地まで
冷え固まった痛みを
オウトツの不安定を
辿って行こう
君の帰る街まで
圧縮の誘惑に乗らぬように
煙るガスに惑わぬように
辿って行こう
君のいた場所まで
熱く燃える星を
水満ちる星を
辿って行こう
君の旅路を
‹星›
「でもどうせ、『願い事を増やしたい』とか、
『時間を巻き戻したい』とか、
『生き返らせて』とかは駄目なんでしょう?」
「だからね。私、意地悪を言うわ」
「『もう二度と、誰の願い事も叶えないで』」
‹願いが1つ叶うならば›