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「わたし別に、難しい事言ってないわ」
「不可能でも非現実でも何でもない」
「理論でも実践でも出来ることよ」
「材料も時間も十二分に用意できてる」
「だから。貴方は頷くだけでいいの」
「そうしたら全部全部終わるから」
「ね、」
「赦してよ」
「貴方の為の事をさせて」
「……頷いてよ、一度でいいの」

‹叶わぬ夢›


甘い香りがした
美しい人だった
微笑み手招かれ
踏み出そうとしかけた足元が
断崖絶壁なのは知っていたし
向こう岸までの断絶が
どうしても届かない場所なのも
間違いようもなく分かってた
すぐ隣で踏み外し墜ちて逝った者も
どうにか飛ぼうと消えて逝った者も
腕引き止めようとする指の強さも
確かに知っていた分かっていた
それでも呑み込む空気の味を
目を逸らせぬ輝きを
確かに分かっていた

‹花の香りと共に›


足を止めた
先行く友が振り返った
首を振った
戻って来た友は違う道へ手を引いた
口を開いた
明るさを装い友が歌った
衝撃音
ああやはり
友が手を引いた
何処へ行こうかと手を引いた
楽しい予感もきっとあると
予知の先でも友は居た

‹心のざわめき›

3/18/2025, 10:12:48 AM