あそこに行ってはいけないよ
あれを食べてはいけないよ
あちらを信じてはいけないよ
いけないよ、と声がする
君とともに生きたかったから
そっちに行ってはいけないよ
それを食べてはいけないよ
そのひとを信じてはいけないよ
いけないよ、と声がする
君のもとに逝きたかったから
いけないよ、と声がする
誰のものかは、分からないけど
‹君の声がする›
それは恋ではないけれど
愛と胸張って言えないけど
日付に託つけた贈り物
口では禁句な感謝の気持ち
‹ありがとう›
『よう、今日は午後からゲリラ雨だぜ』
『そいつはお前さん嫌いな味だぞ』
『あいつ?止めとけ止めとけ関わるな』
『ま、この辺ヤマ張っとけば上出来だろうさ』
『よう、どうしたそんなツラで』
『……あぁ、もうそんな時期か』
『はは!要らん要らん。オレの趣味だ気にすんな』
『まあそうだな、どうしてもってなら
ちっと一つ頼まれてくれ』
『神‹オレ›に毎日祈ってくれよ』
『ソレ。信仰は力なりって正解な』
『大人になるとみぃんな忘れちまうからさぁ』
『死ぬ迄覚えててくれよ、お前さんは』
‹そっと伝えたい›
「明日のテストを頑張ると?」
「勉強をずっと頑張ったら俺になる。
皆を守るのに憧れて自衛隊になった」
「来週のスポーツ大会頑張ると?」
「スポーツに打ち込むなら僕になる。
大怪我したけど監督になったよ」
「あの子に好きになってもらうよう頑張ると?」
「人を愛し続けたなら私になる。
沢山に愛し愛されるアイドルさ」
「好きなことを頑張ると良い、
どれもが未来を導くから」
「………」
「言わなくてよかったの、
こんな自分になる可能性を」
「一番教えたくなかったのは『俺』だろう」
「『僕』が絶え間なく頑張れるなら大丈夫だよ」
「その為に『私』達が呼ばれたんでしょ」
「後は『誰』に辿り着けるかだけ」
‹未来の記憶›
「ココロコロコロミコロコロ
コロコロコロガリムコロコロ」
「どしたの早口言葉?」
「いや現状をほのぼのにしてみた」
「ソレ擬音じゃなくて殺かい」
‹ココロ›
突然の流れ星でも3回唱えられる位
常に願ってる事だから叶うのだと
一言目で舌を噛んだ君が嘯いていた。
流星はただの宇宙の塵屑で
空気に負けて昇華しただけだと
居眠りから跳ね起きた君が嘯いていた。
結局お前は信じてないの
夢物語なそんな話。
結局全部は実力だけだと
奮い立つ君の心根が
折れないようにだけ願おうか。
‹星に願って›
いつも君の影にいた
広い広い背の後ろにいた
其処はぬるま湯みたいに優しくて
たまに振り返る君の笑顔が
殊の外嬉しそうだったのを覚えている
今は私が前に立つ
眩し過ぎた光を受け止めて
灼き貫く痛みに揺らがずに
時に走る怖気の闇に
堪えること無く叱咤を振るい
そうしてたまに振り返る
私の後ろにいる君が
幸せそうに眠る時
私は嬉しくてたまらない
君を守り愛せることが
幸福に過ぎてたまらない
‹君の背中›
あまり遠くへ行かないで
あまり急いで行かないで
青い鳥も宝物も
結局近くにあったのだから
あまり急いで生かないで
あまり綺麗に逝かないで
その命が宝物と
旅立つ君に言えなくて
立ち止まって手を伸ばしてと
旅立つ君に言えなくて
‹遠く…›
口を噤んで手を結って
目を塞いで耳を断つ
全部焼いて捨てたから
全部沈めて消したから
首刎ねられるその瞬間
息の根絶えるその瞬間
この世の誰もが真実を
知らずに葬り去ったのだ
‹誰も知らない秘密›