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12/15/2024, 11:16:17 AM

雪が好きだった
それが自身の姓名に拠る物かは知らないが。
静かに、或いは嵐のように降り積もる、
冷たくやわらかな白が好きだった。

青く青く晴れ渡った快晴を睨めども
灰雲が覆うにはまだ暖かく。
景色の全てを覆う白を
今日ほど望む日は無かったのに。

‹雪を待つ›

12/14/2024, 1:28:36 PM

空を光が駆け上り
見る間に絵を描いていく
どこの家も街路樹も
華やかに彩られ輝いている
そう楽しそうに指をさす
その視界を覆うゴーグルは
全て善いモノへ変える色眼鏡
知られぬまま葬られる惨状を
どうか最期まで知らぬままで

‹イルミネーション›

12/13/2024, 12:53:09 PM

昔、一番好きだったのは兄の作ったお菓子だった
母の作るいつもの味より
父が作る凝った作品より
給食より外食よりインスタントより。
別に、兄が料理上手だった訳じゃない
メニューは疎か、やっと一人で台所に立てる位だった
火も包丁も、一人で扱う許可が出たばかりだった。
それでも留守番中、お祝いごとだからとこっそりと
丹念に丁寧に練られたココアと
ありったけ装飾を散りばめたクッキー
それに勝る美味を私は知らなかった。
何百年何千年経っても忘れられないくらいには

‹愛を注いで›

12/12/2024, 11:55:24 AM

触れられなくてもそばにいたいと希う
ある人はそれをボタンに託し
ある人はそれを指輪に託し
ある人はそれを刺繍に託し
ある人はそれを言葉に託した
魂込められたその一欠片は
全くの他者すら心揺さぶる
つよいつよい祈りのあと

‹心と心›

12/12/2024, 10:02:26 AM

赤い液体が流れていた
何でもないと君は言う
青黒く紫が滲んでいた
何でもないと君は言う
黄色や白が見えていた
何でもないと君は言う
不自由気に顔を顰めた
何でもないと君は言う

ある日バラバラに地に散った
僕を拾い上げ君は言う
何でもなく無いと君は言う
君みたいにヒトでは無いから
本当に何でも無かったのに

‹何でもないフリ›

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