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12/13/2024, 12:53:09 PM

昔、一番好きだったのは兄の作ったお菓子だった
母の作るいつもの味より
父が作る凝った作品より
給食より外食よりインスタントより。
別に、兄が料理上手だった訳じゃない
メニューは疎か、やっと一人で台所に立てる位だった
火も包丁も、一人で扱う許可が出たばかりだった。
それでも留守番中、お祝いごとだからとこっそりと
丹念に丁寧に練られたココアと
ありったけ装飾を散りばめたクッキー
それに勝る美味を私は知らなかった。
何百年何千年経っても忘れられないくらいには

‹愛を注いで›

12/12/2024, 11:55:24 AM

触れられなくてもそばにいたいと希う
ある人はそれをボタンに託し
ある人はそれを指輪に託し
ある人はそれを刺繍に託し
ある人はそれを言葉に託した
魂込められたその一欠片は
全くの他者すら心揺さぶる
つよいつよい祈りのあと

‹心と心›

12/12/2024, 10:02:26 AM

赤い液体が流れていた
何でもないと君は言う
青黒く紫が滲んでいた
何でもないと君は言う
黄色や白が見えていた
何でもないと君は言う
不自由気に顔を顰めた
何でもないと君は言う

ある日バラバラに地に散った
僕を拾い上げ君は言う
何でもなく無いと君は言う
君みたいにヒトでは無いから
本当に何でも無かったのに

‹何でもないフリ›

12/11/2024, 9:39:54 AM

知人と呼ぶには距離近く
友人と呼ぶには気が合わず
兄弟と呼ぶには気恥ずかしく
相棒と呼ぶには他が適し
好敵手と呼ぶには噛み合わず
味方と呼ぶには食い違い
敵と呼ぶには同道を歩んだ
お前の墓標に刻む名を
一人送る野辺で刻む名を
悩み選んだ一言は
それでもどこか事実と遠く

‹仲間›

12/9/2024, 11:26:11 AM

絡んだ指がシーツに埋まる
見上げる君は薄赤く
少し苦しそうに涙を零した
僕が君のものになり
君が僕のものになる
たったそれだけのことで
たったそれだけのことなのだけど
この温かみに永劫二度と
触れられないのは
少しだけ

‹手を繋いで›


君の事が嫌いでした
何でも直ぐ暴力に訴える君が
無くなれば全て解決すると思ってる君が
心から馬鹿だと思いました
便利なだけで心底嫌いでした
でも
君の言葉が言葉通りで
植えられた信念のままに
ただそうあってしまっただけだと
趣味の悪い種明かしを自慢気にされたとき
私は
私はそうあれと願った細腕を
暴力を使えないこの体を
初めて
初めて恨みました

‹ありがとう、ごめんね›

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