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11/11/2024, 10:15:37 AM

白茶色が波打つ度、金の水面を幻視する。
広く、一斉に風をざわめかせる中、
不自然に揺れ止まる影へ、
強く光らせた画面を掲げる。
背の高い海を掻き分けて振られた手に、
招き返しながら明かりを消した。
「完全に迷ってたわ助かった」
「んな奥まで行かなきゃ良かったろ」
「手前はおチビ達に取っとかないとな」
ざわりと揺れる。刈り取られた波が揺蕩う。
少しばかり滲む赤に消毒液を探す、と。
ふわり頭を飾る触覚。
「……器用だこと」
「穂だけだしな」
溢れ落ちた毛が僅かに首を刺す。
そうと穂冠を正しながら、吐息に視線を辿る。
いつも通り読めない瞳と、いつも通り目が合う。
「これも意味があんの」
「さてね」
似合ってはいると叩かれる軽口も、
見つめ続ければ明確に唇を吊り上げて。
「良いよ。好きな意味選んで受け取れば」

‹ススキ›

11/9/2024, 12:33:01 PM

誰でも良い、
俺の頭蓋を開けて脳に焼き記してくれ!
死の代償なぞこの光景だけでいい!

‹脳裏›


恋を出来ないけど好意くらいは分かった
愛の認識は無いけど慈しむくらいは出来た
区別を理解しないけど平等くらいは成せた
ひとの育て方なんて何にも知らなかったけど
知識と環境を整える余裕はあった
ひとでなしだってできることだった
ここに正しさが在ったかは
最期に至っても解答は無いけれど

‹意味がないこと›

11/7/2024, 10:25:19 AM

わたし達
生きる為の栄養を
何でも好きに
選べたのなら

‹あなたとわたし›

11/6/2024, 12:36:18 PM

静かな雨が降っていた
細やかな雨粒は優しく肌を撫で
午後のぬるんだ空気に触れて
むしろ温かくすらあった

涙を隠すように
激情を鎮めるように
灰雲が薄闇を抱き
喉震わす言葉は
風が巻いて逝った

やわらかなやさしさが降り頻る
花を枯らし根を腐らせる
実を落とし種子を沈める
心地良いだけの毒物を
そうと知れど尚手放せず

‹柔らかい雨›

11/6/2024, 9:45:47 AM

ばかみたいっていわれるけれど。
あんまりに眩しすぎた世界の中で、
ただ一時だけ影を傾けてくれた。
そのひとに救われたのは確かだった。

‹一筋の光›


枯れ葉舞う樹に立ち竦む
隣の君は指をさす
花色染める幹枝を
芽吹きゆく小さな瘤を
積雪咲かす日を
繰り返し彩る季節を
隣にいた君は指差した
一人未来を指差した

‹哀愁を誘う›

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