ぺたりと机に頬をつけた。
窓から降り注ぐ日差しと賑やかなグラウンド。
目を閉じていれば今にも、
君がペン先で突付き起こしてくれそうな。
そんな柔らかな昼下がり、
だったら。
がらんとした教室で
荒れ放題の教室で
取り止めなく独り夜を待つ
太陽光に燃え尽きる人たちを
その悲鳴に耳を塞いで
‹日常›
「夜みたいな色が良いの」
「暗いけど澄んでいる、重たくて華やかな色」
「それを」
「何という名で呼ばれ括られているのか」
「私にはどうも分からないけれど」
‹好きな色›
「愛ってなんだろう」
「守り支えるってなんだろう」
「君の為に何が出来るだろうって」
「この間まで何にも悩まなかったのにさ」
「一人なら何でもなかったのにさ」
「笑ったり泣いたり、楽しそうだったり」
「……あと、たまにはね、怒ってたりとか」
「そういう全部、君との全部」
「最後まで全部、傍で見ていたいって」
「……何だか照れくさいけどね」
‹あなたがいたから›
頭を傾けて空を伺う、その裾を引いた。
濡れるから、と引き込んだ傘の下、
僅か泣きそうに表情が歪んでいた。
雨が降ってるよ、と震える口元、
そんなの良いからとその目を覆った。
まだ降っているんだよ、と傾く頭、
それでも良いからと掬い上げた。
そんな事言うから、そんな事言うから、
ほら、罰が当たってしまったよ、と。
水溜りに泥を染めて、表情が消えていく。
可愛い可愛いてるてる坊主、
頸を落とされ雨に沈む。
‹相合傘›
内腑のひっくり返る感覚
たった3秒前のような
あるいは15年は前からのような
風を泳ぐ袖口が
ずっと擽ったかったような
引き千切れるように痛かったような
目の前の景色より
脳内の光景が光速に過ぎて行くような
悔しさも苦しさも全部置いて
でも自由には程遠いような
そんな永遠のような
けどずっと刹那のような
そんな
潰、
‹落下›
それは光り輝く美しいものでしょうか
誰もに万遍無く与えられるものでしょうか
カウントダウンに等しいものだったでしょうか
不公平に奪われ消費されるものだったでしょうか
あるいは
あるいは、
そうきっと、
航海の先、君にとっての宝島となる、
その未知を選び掴めるなら。
‹未来›
波が足跡を攫っていく
裸足の君は遠く見守る
水平線の沈黙を
深くに沈む墓標を
永遠に隣に並ばぬ脚を
君は見守る
遠く見守る
揺蕩い散りゆく花束を
透かし通して拾うことなく
‹1年前›
南総里見八犬伝が好きです。
暗い過去のある敵や光堕ちした味方も良いけど、
悪は悪、善は善な、完全無敵の勧善懲悪は
今時、逆に少なく思うので。
‹好きな本›
「曇ってないか?」
「観測範囲の20%晴れてれば晴れらしいよ」
「つまりハズレの80%引いたと」
「まあそういうこと」
「曇ってないか?」
「雲一つ無い晴天って無いんだわ此方」
「まーじーぃ?」
「まじまじ」
「曇ってないか?」
「……まあ、これから氷河期になるんじゃない」
「っ、お前」
「まあ、雲の向こうから見物しといて」
「なんで……」
‹あいまいな空›
移り気なのだと、振り返った口元は笑っていた。
雨によく似合うその花は、土で色を変えるからだと。
赤に紫のグラデーションが美しい中、
一つだけ鮮やかな青い花弁で立ち止まる。
少しだけ盛り上がった土と置かれた丸石。
桜が赤くなるのは迷信だけど、
酸性の土で青くなるのは本当だと。
そっと、静かに、手を合わせた。
‹あじさい›