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6/20/2024, 11:29:34 AM

頭を傾けて空を伺う、その裾を引いた。
濡れるから、と引き込んだ傘の下、
僅か泣きそうに表情が歪んでいた。
雨が降ってるよ、と震える口元、
そんなの良いからとその目を覆った。
まだ降っているんだよ、と傾く頭、
それでも良いからと掬い上げた。
そんな事言うから、そんな事言うから、
ほら、罰が当たってしまったよ、と。
水溜りに泥を染めて、表情が消えていく。
可愛い可愛いてるてる坊主、
頸を落とされ雨に沈む。

‹相合傘›

6/19/2024, 3:56:56 AM

内腑のひっくり返る感覚
たった3秒前のような
あるいは15年は前からのような
風を泳ぐ袖口が
ずっと擽ったかったような
引き千切れるように痛かったような
目の前の景色より
脳内の光景が光速に過ぎて行くような
悔しさも苦しさも全部置いて
でも自由には程遠いような
そんな永遠のような
けどずっと刹那のような
そんな

潰、

‹落下›


それは光り輝く美しいものでしょうか
誰もに万遍無く与えられるものでしょうか
カウントダウンに等しいものだったでしょうか
不公平に奪われ消費されるものだったでしょうか
あるいは
あるいは、
そうきっと、
航海の先、君にとっての宝島となる、
その未知を選び掴めるなら。

‹未来›

6/17/2024, 12:05:02 PM

波が足跡を攫っていく
裸足の君は遠く見守る
水平線の沈黙を
深くに沈む墓標を
永遠に隣に並ばぬ脚を
君は見守る
遠く見守る
揺蕩い散りゆく花束を
透かし通して拾うことなく

‹1年前›


南総里見八犬伝が好きです。
暗い過去のある敵や光堕ちした味方も良いけど、
悪は悪、善は善な、完全無敵の勧善懲悪は
今時、逆に少なく思うので。

‹好きな本›

6/15/2024, 9:50:37 AM

「曇ってないか?」
「観測範囲の20%晴れてれば晴れらしいよ」
「つまりハズレの80%引いたと」
「まあそういうこと」

「曇ってないか?」
「雲一つ無い晴天って無いんだわ此方」
「まーじーぃ?」
「まじまじ」

「曇ってないか?」
「……まあ、これから氷河期になるんじゃない」
「っ、お前」
「まあ、雲の向こうから見物しといて」
「なんで……」

‹あいまいな空›


移り気なのだと、振り返った口元は笑っていた。
雨によく似合うその花は、土で色を変えるからだと。
赤に紫のグラデーションが美しい中、
一つだけ鮮やかな青い花弁で立ち止まる。
少しだけ盛り上がった土と置かれた丸石。
桜が赤くなるのは迷信だけど、
酸性の土で青くなるのは本当だと。
そっと、静かに、手を合わせた。

‹あじさい›

6/13/2024, 8:50:55 AM

右と左、と問いかける。
右と答えた君が顔を顰めるから笑った。
赤と青、と問いかける。
青と答えた君が手を叩くから笑った。
一と二、と問いかける。
一と答えた君が跳ねるから笑った。
昨日と明日、と問いかける。
明日と答えた君が悔しげで笑った。
君と私、と問いかける。
答えられない君に私は笑った。
答えた私に君は泣いた。
それだけのことだった。

‹好き嫌い›


向日葵が咲いていた。
揺れる大きな集密の種子、一瞥して通り過ぎる。
向日葵が咲いていた。
暑さに項垂れる首二つ、一つも見上げず通り過ぎる。
向日葵が咲いていた。
散水の蒸気に慄く緑、憐れみも無く通り過ぎる。
向日葵が咲いていた。
向日葵が咲いていた。
誰も居ない私の故郷に
沢山の向日葵が咲いていた。

‹街›

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