Open App
6/8/2024, 4:43:23 AM

「……何してんのこんなとこで」
「見ての通り終末待ち」
サクサク頬張られたお菓子に半分程のペットボトル。
息を潜めた様な暗い住宅街で、そこだけ妙に平和だった。
「最後なのに家帰らないの」
「ちょっと前まで居たよ。皆寝たから抜けてきた」
「ははぁ成程、さては恋人とラストカウントしようと?」
「生まれてこの方居た事ないわそんなの」
くるり丸められた包装紙。地面に転がるゴミと裏腹に、こんな時まで白い袋に片付けられていく。
「それじゃあなんでまた」
「質問ばっかじゃモテないよ」
「……兄姉皆恋人連れてきて酒池肉林」
「わぁおご愁傷様……」
かろと回された蓋、喉が動く一呼吸。
「流れ星を見に」
「はぁ?」
「どうせ最後なら目を閉じるんじゃなく、
 最期まで全部見ていたいなって」
「……そっか」

‹世界の終わりに君と›

6/7/2024, 8:59:07 AM

ポコン、と音を合図に画面を開いた。
隣が拳を振り上げた風を感じつつ、
当然な気持ちで表示を見せる。
「当選したのか、おめでとう」
「有難うだけどそんな堂々と落選見せんな??」
「いつもの事だしな。一人で楽しんで来てくれ」
「お前……お前本当いつもそう……」
開かれたスケジュール帳、書き込まれた沢山の予定。
その殆どを共有しないままカレンダーを閉じる。
直前とは打って変わって机にいじける背中が、何処か可哀想でもあった。
「この手のイベントまじでお前と行けた試しないんだが?運が悪いにも程があるだろ!」
「前半は完全同意だな」
「後半!後半も!」
「まぁ、そうだな」
カレンダーは殆ど白いが、一月後には最重要マーク。
暇な日は大概こうしてつるんでいると思えば、一人秘密の買い物には行きにくい。
ましてこの手のイベントは、共に行くより興奮し切った感想を聞くのが楽しいものだし。
だからまあ、個人視点で言えば運は決して悪くない。
悪くない、が。
「お前の友になる為に、一生分の運使ったんだろ」
「おま、お前まじ素面でなに?!」
独りのまま終わった前回に比べれば、
独りのまま終わらせてしまった事に比べれば。
「お前と出会えて良かったってだけの話」
「今そんな深い話するフリあったかぁ?!」

‹最悪›

6/5/2024, 10:37:46 AM

内緒だよ
ないしょだよ
誰にも言ったらいけないよ
誰にもばらしちゃいけないよ
いけないよ
いけないよ
裏切ったらいけないよ
生けないよ
逝けないよ
ねえ、
お前、
聞いていたな?

‹誰にも言えない秘密›


暗い暗い闇の中
華木の香りが揺れ満ちる
ぱちりぱちりはぜる音
指の先まで熱が包む
ゆるく撫ぜられた膜越し
やわく刻まれる鼓動の音
きっときっと覚えている
貴方に掛けた祈りの糸

‹狭い部屋›

6/3/2024, 10:18:00 AM

「持ってない物を得る空想は出来ても」
「持ってない物を失う想像は難しいね」

‹失恋›

6/3/2024, 9:10:19 AM

「正直者ね。美徳よ、確かに」
「でもね、社会に於いて利点かといえば、
 必ずしもそうでは無いわ」
「子供に正直を望むのは、正しい道を歩ませる為」
「……子供の行動思考、その逐一を把握する為」
「言ってみれば、思い通りにしたい大人の傲慢よ」
「だから正直者の子供は喜ばれる」
「でもいざ大人として社会に出た時」
「社会が大人に望むのは、
 最終的には他者を使える人になること」
「正直では無く、本音と建前を器用に扱う事」
「酷い話よね。それまで正しかった事が
 正しくないって突然言われるようなものよ」
「まして、窃盗を蔑む口で技を盗めと、
 そういう空気を読んで行動しろと言うのよ」
「そんな暗黙の了解で、皆が正しく大人になれると
 ……本当にね、馬鹿みたいじゃない?」

‹正直›


「雨ですねえ」
「雨だねえ」
「でも強行したらしいよ」
「今更変えられないでしょ」
「でもねえ嘘か本当かは知らないけれど」
「前置きが長いよ」
「ジューンブライドも旧暦説」
「わあ」
「本来の月だと晴れてて良い感じという噂」
「なんてこと」
「嘘か本当かは知らないけど」
「自衛を重ねた」
「要らない知識調べるのだるい」
「それはそう」

‹梅雨›

Next