「穢れないってどういうこと?」
「汚れてないってこと」
「じゃあお風呂に入ってくればいいの?」
「物理的………」
「じゃあ後何さぁ」
「精神っていうか…魂的な意味を指すことが多いな」
「………魂一周目な命って最近大分希少じゃない?」
「最初に増やしすぎたらしいからまぁ」
「うん……?」
「あー………物理な例で言うなら、
どうせ捨てるなら使い切ってからにするだろ」
「あ、もしかして今世ってお掃除兼断捨離中?」
「だいたいそう」
「そっか、もう君に逢えないかもしれないのか」
「いや、お前と俺はしばらく大丈夫な筈」
「ん??」
「使い込んだ道具の方が掃除しやすいってこと」
「わぁい……大変だぁ……」
‹無垢›
いつか君の流した涙が
熱に散り 雲に帰り 大地を潤し
やがて愛しい子の喉を刺す
甘い橙色になるように
身を裂くように響く声が
風となり 蝶を流し 種子を撒き
いつか晴れやかに笑う人の
両手を飾る花冠となるように
優しい祈りが
例え残酷な絶望を経ても
いつか いつか光の射す
明日へ紛いなく続くように
‹終わりなき旅›
口を開く、閉じる
「うわ、居たなら言えよ吃驚した……」
口を開く、閉じる
「何どうした、お腹すいた?」
口を開く、閉じる
「お前さぁ……」
口が閉じる、開かれる
「お前本当、アイツにそっくりだな」
口を閉ざす、視線が動く
飾り棚の上、写真立て
言葉はいつも、形にならない
別れも再会も、伝えられない
‹「ごめんね」›
「いや、早くない?」
「暦的には夏だし良くない?」
薄ら寒い雨の中、またも冬の上着を引っ張り出した
私の隣、真白い腕を晒して君は笑った
「というか、どうやって来たの」
「お・し・ご・と」
「せ、世知辛い……」
ざわざわとさざめく大通り
カラフルに咲く傘の林を器用に抜けていく裾
「それで」
「うん?」
小走りに追いかけて、追い掛けて、道路の真ん中
ふと立ち止まる君は雨粒を透かしていた
「君の手を取ればいいのかな?」
「……うん、正解」
そういえばあの日は友引だったかと
遠ざかる意識の中、悲しく歪んだ顔だけが見えていた
‹半袖›
「若い子は元気だねー」
「どしたの…って、あー成程」
青空に響く賑やかな歓声
砂埃と共に舞う、白煙の火薬臭さ
最初の最大イベントになるだろうそれに
ゆたり微笑まし気に目を細めた
「借り物競走とか楽しみにしてたんだよね。
無かったけど」
「二次元のみであるあるな奴だ……」
「本当にそれねー」
忙しなく熱気を盛り上げるBGMは
少しばかり五月蝿くも
きゃらきゃらと楽しげな風に少しだけ
二人で足を止めていた
‹天国と地獄›