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5/16/2024, 9:45:18 AM

プレイリストの更新が止まっていた
おすすめばかり集めた趣味じゃないリストだった
絆創膏はいつしかコンビニからのになっていた
教科書もノートも全部自分の名前のものだけ
鞄に在中のお菓子は何時まで経っても減らないし
見に行った家はいつの間にか空っぽだった
忙しなく前後する足音も煩く視界を横切る手も
打てば響くような喧嘩腰じみた声も
あれだけ隣で喧しかった存在感も
呼んだ名前に返事が無いことも

あの日から当然となった全ての事を
当然じゃなかった筈の全ての事を

視線が空を切る度思い出す
けれど瞬く度に忘れ戻る

きっと最期の最後まで
共に居れると思っていた

<後悔>

5/15/2024, 9:17:23 AM

「お待たせ、危ないよ」
「大丈夫、早かったな」
風の吹き抜ける屋上
夕日に煌と舞う黒が眩しく
俯きがちに歩いた先で
からころと笑い声が降る
「後どのくらいだった?」
「一時間くらい」
「本当に案外早かったんだな」
「此処まで来て優先順序は間違えないよ」
「どうだか。手紙忘れてきたりしてないか」
「元々用意するつもりなかったし」
「………そーか」
疾うに既に意味の無いそんなのもの
けれどその右手にひらひら踊る白い紙
「……案外、意外」
「笑えよ一寸感傷に浸ったんだわ」
「笑わないよ、良いんじゃない」
赤い日差しが墜ちてくる
煌々と灼々と墜ちてくる
眼下は忙しなく騒々しく
不気味な程に静まり返り
ただ戦々恐々侃々諤々
大地が太陽に墜ちてゆくのを
ーーー待たないと、二人で決めた
「じゃあ、そろそろ行くか」
「そうだね。またいつか」
靴は脱がずに柵の外
最後の握手は酷く熱く
からりとした笑顔と共に
溶け爛れる風へ足を踏み出した

<風に身をまかせ>

5/13/2024, 2:33:19 PM

さらさらと細砂がこぼれてゆく
もったいなくて指をのばした
さらさらと肌をけずる
まだとまらないと掌をさしだした
さらさらと隙間からこぼれる
あんだ髪で骨をおおった
さらさらと千々にちぎれる
かわきかけの血でくっつけた
さらさらとこぼれる
さらさらとこぼれる
あとなにができるかしら
あとなにができるかしら
「そういえば」
「頭は盃になれるのでした」
さらさらとこぼれる
さらさらとけずる
さらさらと
さらさらと

<失われた時間>

5/13/2024, 10:08:53 AM

好きなものを食べて
好きなものを買って
好きなお仕事をして
好きな遊びをして
好きなことをして
好きな時間に寝て
好きにしても怒られない

なんて
夢を見続けていたかったね

<子供のままで>


赤色を筆で一閃
 君と目が合った瞬間に
桃色をスプレーでグラデーション
 君の姿を追う度に
橙色をペンで描いて
 君の心を知った時
黄色をカラーボール一つ
 君にそれでもを伝える勇気
緑色を様々スタンプ
 君の隣から目を反らし
水色をスパッタリング
 君へ笑えない激情と
青色をバケツに一杯
 君に言えない祝福を
白色で全て塗り潰し
黒色で堂々書き上げる
 君には二度と伝えない
 君に焦がれて描いた先

<愛を叫ぶ。>

5/10/2024, 11:31:30 AM

蝶だ、と呼ぶ。彼女は一瞥しか返してくれなかった。
伸ばした指先に上手く留まったそれを近づけると、
意外な程嫌な顔をされた。
蝶は嫌い?と覗き込む。所謂虫全般苦手という人ではなかったから。重ねるなら、いつも室内の虫を外に出すのは彼女の役目だったから。
あまり好きじゃないの、と彼女は言った。
飛ぶ虫は怖いのよ、と彼女は言った。
こんなに可愛いのに?と翅をつまみ広げた。蜂ならまだしも、無害な蝶を怖がる意味が分からなくて。
見た目の問題じゃないの、と彼女は言った。おぞましいの一歩手前のような目をして言った。
飛ぶ虫は、
飛ぶために身体が脆いのよ、と。
きれいな蝶は、
燐粉が取れると飛べなくなってしまうのよ、と。
離した指先、ふらふらと不格好に飛んでいく白い翅。
白く光る粉を濡れタオルで拭いながら彼女は言う。
今あなたは、命を一つ殺したのよ、と。

<モンシロチョウ>

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