Open App
5/10/2024, 10:42:30 AM

強くて大きな背中でした。
大きな怖いばけものから、一太刀で守ってくれた
その人は、とても格好よくて。
多分初恋でした。一目で好きになりました。
一緒に遊んでくれる足が、
優しく撫でてくれる手が、
行道を寿ぎ帰道を慶ぶ声が、
いつも隣に居てくれた人が、
大好きでした。今も大好きです。
だから、だから、きっとずっと、
ずっと一緒にーーー

「……………馬鹿な夢。」
まだ薄明るい窓の下、固まった身体を伸ばすように
鏡を手に取った。
目と肌の色は問題ない。でも髪を伸ばしすぎた。
表情筋を調整して、屈託ない笑顔になるように。
声の低さが届かないままだけど、今度の報酬で
目処が着く、筈。

夢想の背中を思い出す。
爪先まで天辺まで強く強く思い返す。
まだ全然違う身体を、どう修正する。
あの正しい心根を、どうやって再現する。
どうすればあの人は戻ってくる。
あの日死ぬべきだった私の代わりに、
もう焼け落ちた身体の代わりに、
あの人を、その名を、存在を、
私が確かにしなければ。
必ずあの人を蘇らせなければ。

<忘れられない、いつまでも。>

5/8/2024, 12:46:48 PM

「来年、卒業式が終わったらさ。旅行にいこうよ」
「海とか良くない?青春っぽくてさ」
「お城好きだもんね、それも見に行こう」
「散々写真とってさ、皆に自慢してさ」
「ちょっとくらい大人ぶったってばれやしないし」
「それで、沢山遊んで、沢山笑った後にさ、」
「渡したいものがあるんだよ」
「ずっとの約束をしたいんだよ」

「………返事してよ、お願いだから」

<一年後>

5/7/2024, 12:17:47 PM

恋ってどんなものかしら
甘くて酸っぱくてほろ苦い?
恋っていつ出逢えるかしら
子供の頃に青年期に?
恋って
恋って何なのかしら
知らないまま分からないまま
何回この日を迎えれば?
いつになったら終わるのかしら?

<初恋の日>

5/7/2024, 10:50:05 AM

馬鹿馬鹿しい、と白い煙
薄ら霞みと硝子の向こう
何処か剣呑な黒い瞳
良いじゃない、と白い唇
曇り重なる透明樹脂
僅か和ませた緩い笑み
永遠を誓った金の色
幸福を希った対の証
明日終わってしまうなら、
もう二人で居れぬのなら、
共に終わってしまえばと
共に来世を願えばと

<明日世界が終わるなら>

5/5/2024, 4:37:09 PM

桜の花びら
夜空の火花
暖色の落葉
染めゆく雪

君はいつも隣に居た
いつも居てくれた、から

君の居なかった日々も
とうに思い出せなくなったというのに

墜ち逝く桃花
俯く向日葵
見返られぬ木犀
頸落つ椿花

どうしてこの足は立ち上がれぬ
どうしてこの目は未来を見れぬ

どうして、君は

<君と出逢って>

Next