強くて大きな背中でした。
大きな怖いばけものから、一太刀で守ってくれた
その人は、とても格好よくて。
多分初恋でした。一目で好きになりました。
一緒に遊んでくれる足が、
優しく撫でてくれる手が、
行道を寿ぎ帰道を慶ぶ声が、
いつも隣に居てくれた人が、
大好きでした。今も大好きです。
だから、だから、きっとずっと、
ずっと一緒にーーー
「……………馬鹿な夢。」
まだ薄明るい窓の下、固まった身体を伸ばすように
鏡を手に取った。
目と肌の色は問題ない。でも髪を伸ばしすぎた。
表情筋を調整して、屈託ない笑顔になるように。
声の低さが届かないままだけど、今度の報酬で
目処が着く、筈。
夢想の背中を思い出す。
爪先まで天辺まで強く強く思い返す。
まだ全然違う身体を、どう修正する。
あの正しい心根を、どうやって再現する。
どうすればあの人は戻ってくる。
あの日死ぬべきだった私の代わりに、
もう焼け落ちた身体の代わりに、
あの人を、その名を、存在を、
私が確かにしなければ。
必ずあの人を蘇らせなければ。
<忘れられない、いつまでも。>
5/10/2024, 10:42:30 AM