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5/4/2024, 5:46:43 AM

ころり、と彼女が私にくれた
きっと素敵よと彼女が笑った
それを甘いと呼ぶのだと
それを赤いと呼ぶのだと
彼女と私が であることを
それが    事であると
私達は、知ってはいけなかった

蛇よ、知ってはいけなかったのだ

<二人だけの秘密>


ぱちり、と張られる頬
君は困ったように笑っていた
「駄目だよ、こんなことをしちゃ」
私は黙って手を見下ろした
悲しくて手を見下ろした
「悪い子を誉めたらいけないよ」
痛みのない頬を撫でる君
水面みたいに優しい君
君に正当な言葉を伝えるだけのこと
どうしてこんなにも難しい

<優しくしないで>

5/2/2024, 10:04:29 AM

始めは一つの声でした
ゆるりゆるり伸びていく声が
重なるのも直ぐでした
高くは弾み 低くは奮わせ
重なり合って色をなす
それは一つの歌でした

弦を叩いた優しい響き
革を叩いた重い衝撃
金を叩いた煌めきの波
木を叩いた暖かな転がり
歌に寄り添い色を染める
それは一つの曲でした

並ぶ足裏が地面を擦り
張られた生地の一揃い
拍子を取る手 骨鳴る指先
曲と共に物語を成す
それは一つのステージでした

やがて床も笑いだし
壁もぽろぽろ震わせる
拍手代わりを降らす屋根に
遂に柱は悲鳴を挙げ

それは

それは一つの心中でした

<カラフル>

5/1/2024, 12:51:53 PM

なにもかもがあったのだ。
暖かな日差しも、柔らかな薄曇りも
緑咲く大地も、さざめく海も
鮮やかな星々も、心弾む歌声も
丁度良い服も、沈み混む寝床も
気の置けない親友も、健康的な身体も
なにもかもがあった。
なにもかもがあったのだ。
「それでもお前は行くというの」
零れた果汁が染める袖
蕩けるように甘い芳香
詰るような、責めるような
それが精一杯の抗議と知っていて
「それでも行かなきゃならない」
白み始めた水平線
遠く聞こえる鐘の声
小さく引かれた袖の先が
同じ色に染まりゆく

………
小煩いアラーム、半端に日差しの落ちる床
草葉も人のざわめきもなく、風だけが吹き荒ぶ音
何もかもがないこの場所で、
一人きりのこの場所で
「夢なんかじゃなく、お前の場所まで辿り着くとも」
花を編んだ指飾り
揃いの白こそ誓いの証

<楽園>

4/29/2024, 3:55:25 PM

ふわりと綿毛が飛んでいく
遠く遠く青空に

白く真っ直ぐ引かれる線
長く長く青空に

旅立つ君に別れの歌を
挑み立つ君に激励を

この吐息の一つすら
君の追い風となるように

<風にのって>

4/29/2024, 3:50:08 PM

晴れ空のように澄みわたり
星花みたいに麗しく
陽光がごとく明るく
真実と誠実を心に
大地を駆け
海風を拓き
未来を望み
春夏秋冬を数え
永久を想い
刹那を慈しみ

君が
この世に産まれ落ちた君が
いつまでも幸せの中に在ることを
愛をもってその名に祈る

いつまでも祈っている

<刹那>

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