どの遊びが好き?
どの勉強が得意?
どんな将来を描いて
どんな道に進む?
何を好きになって
誰を好きになって
愛を得て
幸せを得て
どんな大人になって
どう生きていく?
ああでも私、私、未来が見たいのじゃないの
その全部が『今』になった瞬間を
いずれ『過去』になっていく長い時を
君と、君達と共に居たかったの
それだけだったの
<もしも未来を見れるなら>
空気は本当は透明で
水も真実は色無くて
指先の煌めきも
季節を意識した服も
それらの彩り全部全部が
ただの光の悪戯に過ぎないから
だから、本当は、私達は、
こんな姿で居なくても良かった筈なのだ
<無色の世界>
「不合格者の為に毎回散らされる花も切ねぇな」
「多分サクラサクの反対ってだけだろ……」
「てか春だから桜なんだろうが、冬だったら
椿落ちるになってたりしてな」
「不合格以上の不吉にしてやるなよ」
「だって見ろよこの状況さぁ」
「……言うなよ」
「最期まで、楽しいお喋りだけにさせてくれ」
<桜散る>
「夢見草、とも言うんだってさ」
「……それはまた随分と、浮かれた名前だな」
「佳いモノに称賛の名付けをするのは、
もう侘寂の性でしょうよ」
「なるほど」
膝の上、少しの身じろぎと共に焦点が外れる
ひらひら舞う白を追う、ぼんやりした頬を撫でた
「まあ、此処で死にたいって程でもないな」
「満月の下だとまた違うんじゃない?」
「どうだか」
「天邪鬼さんめ」
ふわり軽く、遠ざかる温もりを引き留めず
少し眉根を寄せた頭はそのまま肩に埋められた
「こんなとこで終わりたくない」
「……我儘さんめ」
遠く、砂絵のように崩れていく景色を見ないように
まだ温かい肌を確かめるみたいに
涙の伝う傷口を、拡げ増やすやるせなさを
「行こうか、ちゃんと二人きりになれるまで」
もう何処にも無いかもしれない永遠を
互いだけの腕に閉じ込めて
<夢見る心>
ざざん、と灰色の波
その隙間に消えていく小さな輝き
肩に触れた温もりに思わず振り返ると
吃驚したように手を引っ込めた君
「何、してたの?」
「……あ、あぁ。ボトルメールって奴」
「ごみ捨てじゃなくて?」
「夢の欠片もないな。小瓶に手紙を入れて
流すっていう、浪漫の話」
「……ふぅん」
ぱらぱらと海風に散る短い髪
無感動に水平線を眺める黒から目をそらす
「病み上がりが体冷やすな。家に帰るぞ」
「……分かった」
あっち、と指差された先に嵩張ったスーツケース
車輪で砂浜を漕がなかったことを称賛しつつ
「家っていっても、覚えてないけど」
「そう、だな」
きちり巻かれた包帯、完治した傷痕
美しい浪漫ばかりを語った声に見る影は
「まぁそのうち慣れてくれ、暮らしにくいって
ことは無いだろうし」
「そうかな」
「当然」
ざざん、波打つ灰色
揺れを、揺らぎを、封じ投げた小瓶
「こちとら、君の世話には慣れてんだよ」
もう二度と『君』には会えずとも
<届かぬ想い>
「無神論者じゃなかったっけ?」
「宗教信仰してないだけ。八百万の神は信じてるよ」
「出た日本人のおかしいとこ」
「だって一柱の神様が全員分常に観てるとか、
其処まで行かなくても有限数で採点してるって
今地球人口何人だって思っちゃうよ、やっぱり」
「そこはほら神様だからどうとでもね?」
「それ言ったら全部そうじゃん」
「それはそう」
「だったらその辺に在るモノ全部に神様が宿ってて
何処で何やってもナニカしらは見てる、の方が
お天道様が見てなくても悪い事出来ないなぁって
考え諭し易いんだよねえ」
「近年の監視社会じゃんやば」
「確かに」
「で」
「うん」
「君のカミサマは大丈夫そう?」
「うん、カメラもマイクも切れたっぽい」
「おっけ、向こう着いたら着衣水泳からの
全品お着替えね。最終はその後で言うわ」
「ありがと助かった」
「しっかし……ヤンデレって荒御霊だったんだね」
「それはガチ神に目ぇ付けられるからやめよ?」
<神様へ>