「…ちょっと此方向いて」
「なぁに、って……もぉ、写真撮るなら言ってよ」
「桜拐われ感あったから」
「えー?見せて」
「ほい。……桜吹雪ならって思ったが、あんた本当
青空似合わないな」
「酷くない?」
「色白過ぎるんだよ。そろそろ帰るか」
「あ待って待って。後ね桜シェイク飲みに行きたい」
「……何処まで」
「えっとぉ、ここのお店」
「それ買ったら帰るぞ」
「心配性だなぁ、大丈夫だよ」
「足元見てから言え雪女」
「……あららぁ、ごめんなさいね?」
<快晴>
「地球って丸いじゃん」
「うん」
「遠くまで行っても、同じ所に戻って来るから
『果てが無い』って言うじゃん」
「そうだね」
「じゃあさぁ、『果てが無い』宇宙もさぁ、
ずっとずっと全部の星も見えないくらい、
重力も引力なんにもなくなるくらい
遠く遠くに行ったらさぁ、
案外元の場所に戻ってきたりするんじゃない?」
「……そうかもね」
「だからさ、待たないふりしてて。
空でも地面でもなく前見てて。
そしたらさ、帰ってきた時一番に気付くでしょ」
「……うん」
<遠くの空へ>
君に出会えて良かった、と
息が詰まる程嬉しい、と
静かに流れていたBGMに、
君はぱちりと視線を上げた
「いっつも一緒にいると、有難みが薄れちゃうね」
そうだね、と頷いて窓を見る
君は少し寂しげにストローを回す
「だからね、いつだって言えると思ってたんだ」
そうだろうね、と目を伏せる
そう思っていたのは君だけじゃ無い、ということも
「どうしようね、僕もう永遠に」
「君に本当の事言えないや」
……ごめんね、と
交わすことの出来ない言葉が透き通る
「 」
、と
其処にはもう、ひとりきり
<言葉にできない>
「あれは桜?」
「遅咲きの梅だね」
「あっちは?」
「惜しい、アーモンド」
「……あれは?」
「白木蓮。春の白い樹花が全部そうな訳じゃないよ」
「……桜難しい」
「そう?あ、その緑と黄色の花は桜だよ」
「桜ってピンクじゃないの…?!」
「有名所はね。後あの濃緑と濃桃で桜餅みたいになってるのもそう」
「桜って花終わってから葉っぱじゃないの?!」
「有名所がね。あくまでね」
<春爛漫>
ええ。私、既に仕えさせて戴く約束をした方がおりますので。
……はあ、つまり、あの方よりご自身の方が相応しいと仰る。
いえいえ、貶している訳では。
私の主様は、そうですね……とても見目麗しく、同じくらいには心も美しい方、
は?いえあの。はあ、条件は満たしていると。
申し訳ございませんが、最後まで聞いて下さいませ?
ちょ、もう、離してください!
「遅かったね?」
「申し訳ございません。失礼な輩に絡まれまして」
「お前が其処まで言うのも久し振りだね」
「ええまあ、最近は少なかったものですから」
「……もっと分かりやすい所有印が必要かな」
「いいえ。大々的に自慢して参りましたから」
「……度々思うけど、お前のソレも相当だよね」
「私から、もっと分かりやすく申し上げた方が宜しいですか?」
「どのような見目でも、どれ程狂っておられようと」
「この魄が擦り切れ消える迄、私が戴く愛すべき唯一の主は」
「貴方様だけですので、御覚悟を」
「……うん、ありがとう」
<誰よりも、ずっと>
「ほらほら、もっと寄ってってば」
「いやそのカメラで全員収めるの無理ゲーだろ!」
「此方腕ちょうだい、前列で組めばなんとか」
「ちょっと背景になってくるな!」
「いや顔認識出来なかったらアウトだからな?!」
「膝載せろ膝」
「もー!時間無いんだよー!」
「行ける行ける誰かシャッター!!」
「……ああ、良かった」
「まだ、皆の事、思い出せるね」
「一緒に、生きられるね 」
<これからも、ずっと>
ふうわりと赤い頬
緩く細められた目元
一音目の為に開かれた唇の後ろ、
緋く朱く熟れた果実が
熔ける如く潰れていく
<沈む夕日>