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「夢見草、とも言うんだってさ」
「……それはまた随分と、浮かれた名前だな」
「佳いモノに称賛の名付けをするのは、
 もう侘寂の性でしょうよ」
「なるほど」
膝の上、少しの身じろぎと共に焦点が外れる
ひらひら舞う白を追う、ぼんやりした頬を撫でた
「まあ、此処で死にたいって程でもないな」
「満月の下だとまた違うんじゃない?」
「どうだか」
「天邪鬼さんめ」
ふわり軽く、遠ざかる温もりを引き留めず
少し眉根を寄せた頭はそのまま肩に埋められた
「こんなとこで終わりたくない」
「……我儘さんめ」
遠く、砂絵のように崩れていく景色を見ないように
まだ温かい肌を確かめるみたいに
涙の伝う傷口を、拡げ増やすやるせなさを
「行こうか、ちゃんと二人きりになれるまで」
もう何処にも無いかもしれない永遠を
互いだけの腕に閉じ込めて

<夢見る心>

4/17/2024, 9:37:15 AM