雪が綺麗、月が綺麗、花が綺麗
鳥が綺麗、風が綺麗、星が綺麗
一つ一つ並べ立てて、答え合わせに覗き込む、
君が一番綺麗なのだけど。
<美しい>
「朝も夜も寝てて良いよ。鬼に見つかったらお仕舞いだ」
「どれでも食べ放題さ。増え過ぎで埋もれる前にね?」
「空を自由に飛べるよ。敵は宇宙から来るから」
「何人と愛し合ったって良いの。だって、子供は試験管でしか生まれないわ」
「勉強?仕事?要らない要らない。星で最期の一人だもん」
「ずっと楽しく遊んでよーね!飽きられたらみーんな棄てられちゃうもの」
『君たちがよく言うじゃない』
『ね、良い世界でしょう?』
<この世界は>
「不思議なことを言うね」
「君が言ったんじゃないか」
「冗談だった?いやいや、前にそれでスルーしたら怒ったの君じゃん」
「全部本気、なんでしょ?ちゃーんと覚えてるよ」
「……何、今更。泣いてどうなるとでも思ってるの」
「あ、あとね。コレしっかり君の指紋付いてるから」
「そ。誰でも君のだと分かるよね。皆に見せびらかしてたのは他でもない君な訳だし」
「うん。だから、ちゃんとね」
「一緒に地獄に落ちようね?」
<どうして>
例えば、クリームの海に溺れるような。
例えば、沢山の猫に囲まれるような。
例えば、世界の王様になるような。
例えば、宇宙の冒険者になるような。
例えば、君が隣に居るような。
<夢を見てたい>
愛しているねと問われて。
愛していますと答えた。
本心からの言葉だったけれど、どうしてか貴方は哀しげだった。
これでも愛しているかと問われて。
いつだって愛していますと答えた。
痛みも苦しみも、貴方からのものであれば耐えられた。
次も愛してくれるかと問われて。
当然愛しに行きますと答えた。
何度目かも忘れた輪廻だった。
愛していたよと貴方は笑って。
愛していましたと私も笑った。
広がり行く赤の色すら美しい人だった。
<ずっとこのまま>
赤くなった指先を見ていられなくて目を反らした。
「まだやってんの」
「うんまあ、願掛けみたいなものだからね」
数分前までの雪塊は、二回りほど小さい地蔵が見えるまで除けられて。びしょ濡れの手袋を閉まって尚、合わされた手はしっとりと光を弾いていた。
「こんな日までやること無くない?」
「こんな日だからさ。善行は積んでおくに越したことはないものだし」
白くなったスカートを叩いて笑うその人に、いつも真剣に祈る掌で何を思っているのかは、未だ問えないでいた。
『お地蔵様はね、子供の守り神なのさ』
『都合の良い時だけ子供のつもりとか、寧ろ罰当たりじゃないの』
『ふふ、良いじゃない』
しんしんと白い雪の向こう、わあわあ人の声がする。
「あ…マフ……じゃ……………柄……うで………」
「…名発……これ……救助……………」
重たくて痛くて寒かった筈なのに、なんだか暖かいような気がした。
「……し、………君、君!意識はあるか!」
「………?」
「一名救助!朦朧ですが意識あります!」
「よく頑張った!此方で預かる!もう一人は?!」
「未だです!もう少し近辺探します!」
「君まで遭難してくれるなよ」
「気を付けます!」
白い部屋で気づいた時、空っぽの手袋を握っていた。びしょ濡れのそれは一回り大きくて、自分のじゃなかった。
どうしても離さなかったのと取り上げられると、何処からかころりと石が落ちた。
「……何でお姉ちゃんが助からなかったの」
『彼女はそれを願わなかったから』
「何で俺は生きてるの」
『彼女はずっと、君の幸せを祈ってたからさ』
<寒さが身に染みて>