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赤くなった指先を見ていられなくて目を反らした。
「まだやってんの」
「うんまあ、願掛けみたいなものだからね」
数分前までの雪塊は、二回りほど小さい地蔵が見えるまで除けられて。びしょ濡れの手袋を閉まって尚、合わされた手はしっとりと光を弾いていた。
「こんな日までやること無くない?」
「こんな日だからさ。善行は積んでおくに越したことはないものだし」
白くなったスカートを叩いて笑うその人に、いつも真剣に祈る掌で何を思っているのかは、未だ問えないでいた。

『お地蔵様はね、子供の守り神なのさ』
『都合の良い時だけ子供のつもりとか、寧ろ罰当たりじゃないの』
『ふふ、良いじゃない』

しんしんと白い雪の向こう、わあわあ人の声がする。
「あ…マフ……じゃ……………柄……うで………」
「…名発……これ……救助……………」
重たくて痛くて寒かった筈なのに、なんだか暖かいような気がした。
「……し、………君、君!意識はあるか!」
「………?」
「一名救助!朦朧ですが意識あります!」
「よく頑張った!此方で預かる!もう一人は?!」
「未だです!もう少し近辺探します!」
「君まで遭難してくれるなよ」
「気を付けます!」

白い部屋で気づいた時、空っぽの手袋を握っていた。びしょ濡れのそれは一回り大きくて、自分のじゃなかった。
どうしても離さなかったのと取り上げられると、何処からかころりと石が落ちた。
「……何でお姉ちゃんが助からなかったの」
『彼女はそれを願わなかったから』
「何で俺は生きてるの」
『彼女はずっと、君の幸せを祈ってたからさ』


<寒さが身に染みて>

1/12/2024, 9:48:45 AM