恋をした。初恋だった。廊下ですれ違った時に見た笑顔で一目惚れ。男女問わず優しい所にも惹かれた。
彼は、女子人気は高くなかった。顔も整っており、性格も良い、気遣いができるなど。モテる要素は沢山あったのに。
原因は彼の親友の山下だ。イケメンで運動神経バツグン、頭を良い。誰とでもすぐに打ち解けて仲良くなれるヤツ。
山下ばかりが目立って、彼は影のようになってしまっている。だから皆は彼の凄さにも気がつかないみたいだ。
告白する勇気も無ければ墓にまで持って行くつもりの恋心。でもせめて一回でも会話をしてみたい。けれど彼と私との接点など無い。小学校も中学校も違う、初対面の状態として会うのだ。
まぁ私は一方的に彼のことは知っているが、彼は違う。
本当にどうすればいいのだろうか。
少し垂れ目の黒髪の男の子。包みこんでくれる様な暖かい顔で笑う貴方に人生で初めての恋をしてしまった。
小学五年生、私はアニメや漫画、ゲームの影響を受け良くも悪くも様々な知識を吸収して生活していた頃の話。
ある時、「不老不死」という言葉をゲームから知った。
老いることも無ければ死ぬこともない。当時の私は誰かが亡くなる経験をした事がなかったので、死という言葉は知っているが実際のところ深いことは理解していなかったと思う。
しかし憧れるという感情は生まれなかった。当時の動画サイトに「もし不老不死になったらどうする?」という動画が大量にあり好奇心で一つ視聴してみると、失ってしまった体は再生しない、大切な人達は先に死んで孤独になるという話。加えて動画内のイラストが妙にリアルにも思えた私は「不老不死」にトラウマを覚えることになった。
私は絶対に不老不死反対派で友人は、私と一緒の考えだと思い帰り道に聞いた。
「ねぇ、不老不死に成りたい?」と。
少し考えてから友人は、はっきりとこう言った。
「うん。」
その言葉のを聞いた私は驚いて、近所迷惑になるぐらいには大きな声で「どうして!?」と聞いた。
そこから私達はその場に立ち止まり、私の一方的な説得が始まった。
孤独になる、怖いことをされる、痛覚は消えるわけではないなど。様々な理由を言ったが友人の意見は変わらず。
心の底から理解ができず、友人が少し不気味に見えてしまいこんなこと聞かなければ良かったと後悔をしていた時、友人は夕日を背に何でもないような声で言った。
「家族が死んじゃうのは嫌。だけどいつかはみんな死んじゃって孤独になるときはくるから。もし、孤独になったらハワイに行けばいいよ。」
何故、ハワイに?というツッコミがでた。
曰く日本語が話せる人がいるらしい。その人たちがいれば国を忘れ孤独になることは無いらしい。
別れが辛くないのか?と聞けば「辛いけどね。」と言う
「でも私、死にたくないし老けるのも嫌。だから成れるなら不老不死に成りたい。これはきっと大きな願い事だから、代償も大きいでしょ?それでも受け入れるよ私は。」
理解は出来たが納得の出来なかった私は生返事をして帰った。
今にして思えば、本当にどうしてハワイに行く理由には納得はしていないが死ぬのも老けるのも嫌と言うことは納得した。
けれどやはり私は絶対に不老不死なんてなりたくない。
中学は別のところに行ってしまった彼女は、思い返せば不思議な子供で独りぼっちでも気にしないような人であった。
彼女なら不老不死になっても大丈夫そうである。むしろ急に現れて「不老不死に成った。」とも言いそうな奴だ。
仮に明日世界が終わるとしても、きっと彼女はハワイにでも旅行しそうだし、実は不老不死に成っていて世界が滅んでも自由に生きて行きそうである。
つい仕事の休憩時間そんなことを考えてしまった。
君と出会って、二十年。気がついたら大人になっていた。
貴方とは小学二年生から高校生までずっと一緒で親友とお互い呼び合っていた。
社会人になってから、会える機会は減りそれでも私の心の支えになっていた。
よく、昔は結婚式に招待してスピーチをしてもらう。と約束はしていが、ついぞその約束は果たされることはなかった。
改めて思う。あの約束は何だったのか?何故にお前の結婚式に私を招待しなかったのか?
彼女が結婚したことを知ったのは、つい一週間前。皮肉にも彼女の結婚三年目の日であった。
高校時代には、喧嘩だってしたが社会人になって最後に会った時は何事もなく別れた。原因がわからない。
私が何かしたのかもしれない。彼女は実は私のことが嫌いだったかもしれない。けれど嫌いだったらあんなにも長い時間付き合えないだろうし、親友だから言ってくれれば直したはずだ。
スピーチは任されなくてもいい。せめて招待してほしかった。
彼女の結婚を教えてくれた友人から送られた写真に映る貴方の綺麗な姿と貴方が好きになった人に会いたかった。
貴方と一緒にその輝かしい写真に笑顔で映りたかった。
耳を澄ますと、あの人の声が聞こえてきた。
少し低くて聞きやすい声。あの人の声だけはつい聞いてしまう。
好きな人だからではない。私は彼の声が好きなのだ。
彼は私のことを知らないだろう。なにせ、この高校3年生の今になってさえクラスは一緒になった事はない。