白樺

Open App

 小学五年生、私はアニメや漫画、ゲームの影響を受け良くも悪くも様々な知識を吸収して生活していた頃の話。
 ある時、「不老不死」という言葉をゲームから知った。
 老いることも無ければ死ぬこともない。当時の私は誰かが亡くなる経験をした事がなかったので、死という言葉は知っているが実際のところ深いことは理解していなかったと思う。
 しかし憧れるという感情は生まれなかった。当時の動画サイトに「もし不老不死になったらどうする?」という動画が大量にあり好奇心で一つ視聴してみると、失ってしまった体は再生しない、大切な人達は先に死んで孤独になるという話。加えて動画内のイラストが妙にリアルにも思えた私は「不老不死」にトラウマを覚えることになった。
 私は絶対に不老不死反対派で友人は、私と一緒の考えだと思い帰り道に聞いた。
 「ねぇ、不老不死に成りたい?」と。
 少し考えてから友人は、はっきりとこう言った。
 「うん。」
 その言葉のを聞いた私は驚いて、近所迷惑になるぐらいには大きな声で「どうして!?」と聞いた。
 そこから私達はその場に立ち止まり、私の一方的な説得が始まった。
 孤独になる、怖いことをされる、痛覚は消えるわけではないなど。様々な理由を言ったが友人の意見は変わらず。
 心の底から理解ができず、友人が少し不気味に見えてしまいこんなこと聞かなければ良かったと後悔をしていた時、友人は夕日を背に何でもないような声で言った。
 「家族が死んじゃうのは嫌。だけどいつかはみんな死んじゃって孤独になるときはくるから。もし、孤独になったらハワイに行けばいいよ。」
 何故、ハワイに?というツッコミがでた。
 曰く日本語が話せる人がいるらしい。その人たちがいれば国を忘れ孤独になることは無いらしい。
 別れが辛くないのか?と聞けば「辛いけどね。」と言う
 「でも私、死にたくないし老けるのも嫌。だから成れるなら不老不死に成りたい。これはきっと大きな願い事だから、代償も大きいでしょ?それでも受け入れるよ私は。」
 理解は出来たが納得の出来なかった私は生返事をして帰った。
 今にして思えば、本当にどうしてハワイに行く理由には納得はしていないが死ぬのも老けるのも嫌と言うことは納得した。
 けれどやはり私は絶対に不老不死なんてなりたくない。
 中学は別のところに行ってしまった彼女は、思い返せば不思議な子供で独りぼっちでも気にしないような人であった。
 彼女なら不老不死になっても大丈夫そうである。むしろ急に現れて「不老不死に成った。」とも言いそうな奴だ。
 仮に明日世界が終わるとしても、きっと彼女はハワイにでも旅行しそうだし、実は不老不死に成っていて世界が滅んでも自由に生きて行きそうである。
 つい仕事の休憩時間そんなことを考えてしまった。

5/6/2024, 11:39:11 AM