りらるらり 小六

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10/13/2023, 3:20:31 PM

親友から、こんなメールが届いた。

「死のうと思う。どういう死に方がいいか決めてくんない?俺、家にいるから。」

死ぬ?ふざけているのだろうか。死に方を決めてほしい?これ以上に阿呆らしいお願いはこの世に存在するのだろうか。きっとふざけているんだろう。心配した俺の顔を見たいだけだろう。
……もし、本気だったら?
そんな考えが頭をよぎって、気がつくと自分の家を飛び出していた。俺は、無我夢中で走った。もし、お前の悪ふざけで、俺が恥をかいてもいい。それより、お前がいなくなるのが怖い。怖くて怖くてたまらない。そんな思いのせいで、走る速さは徐々に速くなっていった。
そして親友の家に着いた。無意識にインターホンのボタンを連打していた。
ガチャリ。
「あぁ、本当に来てくれたんだ。」
出てきたのは暗い雰囲気の親友だった。
「お、お前、本当に死ぬつもりなのか?」
無言の時間が続いた。この無言の時間の長さから、本気だということがひしひしと伝わってきた。
「……うん。そうだよ。」
「……理由は?」
「そんなに深い理由は無いよ。ただ、ガキの頃に戻りたくなったんだ。」
意味がわからなかった。
「やる事も無視して遊んで、馬鹿みたいに笑ってた時が俺の人生の最高潮だった。今ではもう、子供みたいに笑うことさえも出来ない。」
そうだ、こいつ馬鹿だったんだ。
「そんなこと言って、馬鹿じゃないの!?もう一度、やり直せばいい事でしょうが!」
「……やり直すことなんて出来るわけないだろう。」
こいつは、どこまでも世話が焼けるやつだなぁ。
「昔みたいに嫌なことは見ないようにして、楽しいことだけすればいいんじゃないの?協力してやるよ。」
「そんなこと、できるの?」
「できるさ。だって俺ら、最強の相棒だろう?」
子供の頃のごっこ遊びでよく使っていた言葉を言ってみた。
「お前、まだそんなセリフ覚えてたのかよww」
笑いが止まらなくなって、何分か二人で笑っていた。こんな時間が続いたら幸せだなぁ。
「俺、さっきのお前が話してた事、やってみたい!」
笑いがおさまってきて、親友がそう言った。
お前はまだ気づいていないのか。

「もうできてるじゃん。」

「ほんとだ!」

そう言った彼は子供のように笑っていた。

               『子供のように』

10/12/2023, 2:09:08 PM

今日もあの子、いるかしら。私は放課後、寄り道をすることが多い。友達と待ち合わせ?いいえ、違うわ。ええと、このまま言うと、友達がいない子みたいにきこえるかもしれないけれど、その、ええと、ちゃんといるんだからね!いないわけじゃないわ。
その寄り道というのは、野良猫に会うこと。いつもの通学路とは違う道で帰った時、その猫に始めて会いました。彼女は奇妙なほど美しく、私は一目で彼女の虜になってしまいました。
「あなた、綺麗ね。飼い主さんはいらっしゃらないの?」
彼女は知らんぷりです。猫のくせに生意気です。まあ、そういう所も彼女の魅力なのでしょう。
「明日もここで会えないかしら。」
彼女は、にゃあ、と鳴いてどこかへ行ってしまいました。返事をしてくれたのかしら。嬉しくて笑みがこぼれてしまいます。
「猫のくせに生意気ね。」
明日も、もしかしたら、彼女に会えると思うと、また、笑みがこぼれます。あーあ、明日の放課後が待ち遠しい。

                     『放課後』

10/11/2023, 11:14:19 AM

これは、遠い誰かの夏の思い出でしょうか。

ふわりふわりと風になびく白いワンピース。そこは向日葵畑でありました。向日葵の黄色とワンピースの白の組み合わせは、千年分の夏を集めたくらい、夏らしい色でした。それから少しして、彼女がふりかえり、僕に微笑みました。その笑顔は、朝、カーテンを開けた時に目が合う、太陽の様でした。

                   『カーテン』

10/10/2023, 10:29:31 AM

私は寂しくなんかありません。もう四年生になったんですもの。一人でお留守番もできるし、一人で寝ることもできるのです。なのに、クラスの男の子にこう聞かれたのです。
「寂しいの?」
と。
「寂しくないわよ。私、強いもの。」
「もかちゃん、すごく寂しそうに見えるよ。どんなに強いヒーローでも寂しい時はあるんだよ。そのままだったら、辛くなっちゃうよ。」
その男の子は少し前まで虐められていた、けんたくんでした。虐められていたのを助けたのは私なのです。
寂しくなんか、寂しくなんかないわ。私は強いんだもの。お母さんがいなくなったって、お父さんと二人で生きていけるの。お母さんがいなくなったって……
「ほらね、もかちゃん、我慢してたんだね。」
あれ。私、泣いていたのでしょうか。けれど私は強いので泣いたりしません。
「私をからかっているの?」
「ううん、ほんとだよ」
頬に生暖かいものがつたいました。
「けんたが優しいせいよ。寂しくて泣いたんじゃないわ。寂しくなんか、ないもの。お母さんのことだって……」
本心を言えば、すごく寂しかったのです。寂しい時に優しくされたら、泣いてしまうではないですか。

                  『涙の理由』

10/10/2023, 9:59:58 AM

「あなたは、踊るように笑うのね。」
「はい?もう一度聞いても良いかしら。」
「いいえ。大した事じゃありませんの。」
同性を好きになるのはおかしいことでしょうか。この好きは、らいく、という気持ちなのでしょうか。いいえ、これではないのです。いわゆる、らぶ、という言葉の方がこの気持ちには似合っている気がします。
だからでしょうか。貴方の笑顔を見ると私の心が踊るのは。まあ、どちらの「好き」でも、好きということは変わりません。貴方のことが大好きなのです。だから、貴方の笑顔を見ると、ココロがオドルのですね。

                 『ココロオドル』

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