ワンピースのバックファスナーを開けるときの、ちいいいと言うかすかな音が世界で一番好きだ。
「ん。ごめん、引っかかっちゃった」
君の服を脱がせているとき、ファスナーが布地を噛んだ。
苦戦して外そうとしていると、
「珍しいね。さいきん、手馴れてきたなあって寂しく思ってたとこだよ」
君は笑った。
「はじめのうちは、心臓バクバクもんだったからね」
付き合いだした時のことを思いだし、僕は懐かしくなった。
君は僕の初めての人。
「よし、外れたよ」
「噛んだのは服じゃなくて、私のお肉じゃない? 最近太っちゃって」
服のサイズ、ワンサイズあがっちゃったの、と恥ずかしそうに言う。
「幸せ太りってことだよ」
「気休め言わないで。ダイエットして絞ろうかって、けっこう深刻なんだから」
「あのね、言っとくけど、この世に変わらないものなんてない。歳を重ねれば人はふくよかになるし、服だってワンサイズ、ツーサイズ大きくなるよ」
気にしない気にしないと一休さんみたいなことを口にしてやる。
「慰めてくれてどうも」
笑った君を僕はベッドに横たえた。そっと。
歳を取れば人はふくよかになるし、服のサイズだって上がる。
だけどただ一つ、変わらないものがある。ーーそれは、君への僕の愛さ。
#変わらないものなんてない
受験勉強ですが何か?
#クリスマスの過ごし方
カップルでいちゃつこうが
イルミネーションを見に行こうが
サンタの振りをして子どもに夢を与えようが
俺には関係ない
いつもどおり総菜をコンビニで買って
ビールで胃に流し込んで〇ソして寝るだけよ
365分の1日の夜。それだけでいいだろう?
#イブの夜
「ママ、知ってた? ほ、ほんとはサンタさんなんていないんだって、お前んとこの父ちゃんか母ちゃんがこっそりプレゼントを用意してるんだぜ、って。隣の組のようちゃんが言った! そんなのうそだあ、デタラメ言うなってボク、つかみかかっちゃったーー、け、ケンカしちゃった。ごめんなさい、でも、うそだよね? ようちゃんがでまかせ言ってるんだよね? サンタさんが、ボクがいい子にしてるから、ほしいプレゼントを贈ってくれてるんだよね?」
そう言って、
大きな涙をポロポロ量産する息子。
私にとってはあなたが一番の神様からのプレゼントだよ。
#プレゼント
「お。ハンドクリームか」
夫がリビングに来るなり、鼻を引くつかせる。柚子の香りのお気に入りのものを塗っているところだった。
私は頷いた。
「今日、大掃除したからね。荒れないように」
「ねえ、覚えてる?君を好きになったの、そのハンドクリームがきっかけだってこと」
「覚えてるよ」
微笑む。
「高校の時、冬に教室で私がこうやってハンドクリーム塗ってた時、たまたま前の席にあなたが座ってたんだよね。で、クリーム出しすぎちゃって勿体ないからあげる、って塗ってあげたね」
夫も同じ笑顔になった。
「懐かしいな。女の子にそんなことされたこと無かったからさ。一発で落ちちゃった。俺ってチョロいよね?」
「そんなことないよ。ちなみに計算じゃないからね、あくまで善意」
「どうだか」
わざと首を傾げる夫の手に、多めに出したクリームを塗ってあげる。うちの年中行事だけど、彼も満更でもなさそうだった。
柚子の香りのハンドクリームは、私たち夫婦のラッキーアイテム。
#柚子の香り
100作目です。いつも読んでくださってありがとう