KAORU

Open App
12/14/2024, 4:15:43 PM

 僕と君は、遠距離でイルミネーションを見に行くデートもままならないから、
 同じ星空を見上げよう。
 Youtubeの天文台ライブカメラにアクセスして。同時視聴するんだ。
「あっ、今流れたね!」
「見えたよ、綺麗だねえ」
 ワイン片手にそんなやりとりをすれば、それなりにロマンティック。


 今夜はふたご座流星群。ダイナミックな宇宙のイルミネーションを君とふたり、堪能するのさ。

#イルミネーション

12/13/2024, 4:19:49 PM

 コーヒーを丁寧に淹れるときって、あれ、飲み物を作っているっていうより、愛情を注いでいると思うんだよね

 じっくり 深く

 はい、どうぞ

#愛を注いで

12/12/2024, 9:46:02 PM

 あたしには、カップルのあいだにある、赤い糸が見える。左手の薬指と左手に薬指に糸がつながっているか、心と心がつながっているかどうか、小さい頃から見えていた。
 他の人には見えないのだ、自分だけの能力なのだと知ってから、口に出さないように気を付けて生きてきた。
 あたしの目に赤い糸が映るカップルは、どんなに遠距離になっても、困難が訪れても結局むすばれるし、どれだけ仲良さげなカップルも、それがつながっていなければ最終的に破局した。
 怖い力だ。知らなくていいことだって、この世にはあるしね。
 でも、いまのところこの能力は消えそうにないし、つきあっていくしかない。
 問題は、……
「ん? どうかした? 茜ちゃん」
 隣を歩く彼を見上げていたあたしは、はっと我に返る。いつの間にかぼうっと見とれていたらしい。
 彼は不思議そうにあたしを見ている。
「ううん、何でもない」
 そう言うと、彼はそう?と微笑む。優しい彼。出会った時からずっと。
 問題は、自分の左の薬指に、この人とつながる糸が見えないことなんだよねえ。
 これが、自分のことは見えない特殊能力「あるある」なのか、それとも、運命のひとではないからなのかーー。見極められないのが目下の悩み。

#心と心

12/11/2024, 8:44:39 PM

「多恵子さん、何かあった?」
 殿山くんが言う。シンク前で並んで食器を洗いながら。
 食洗機はあるけれど、二人分のワンプレートぐらいなら、手洗いでササッと洗ってしまいたい。
「え、なんで? 何ともないよ」
 水で洗剤を洗い落としながら言うと、「そう?」と深追いはしてこない。
「……」
「……」
 微妙に気まずい。私はきのう掛かってきた父親からの電話を思い出していた。
 いなかの父が、上京してくるという。久しぶりに顔が見たいと。
 大学に進学して、こちらで就職してから、実家にはお正月とお盆に帰省するぐらいだ。母が他界してからは、あまり足が向かない。
 父はホテルと取ると言っていたけれど、やはり私のマンションに誘った方がよいのではないか。田舎暮らしのひとだし、東京を一人で歩くのも老齢で、たいへんなんじゃ。せめて私のうちに泊めてあげたい気もする。
 でも……。
「あのさ、多恵子さん、何でもないフリしなくていいんだよ。何かあったら、俺、聞くから」
 遠慮がちに、でもしっかりした口調で殿山くんは切り出す。いろいろ考えた末ということがわかる、声音で。
「何ができる訳じゃないけど、聞くだけならできるから」
「うん。ありがとう」
 好きだなあと思う。こういうとき。
 8つも年下の、部下のこの男の人が、私は好きだ。まっすぐに私を愛してくれる。
 私はぴとっと彼にくっついた。彼はお皿拭きをしていた手を止めて、私を見た。うっすら赤くなっている。
 可愛い。
 私から背伸びして殿山くんにキスをしながら、私は「問題は、彼と同棲をし始めたことなんだよねえ……」と内心思った。

#何でもないフリ
「紅茶の香り9」

12/10/2024, 9:57:42 PM

「仲間っていいよなあ」
 なんて言うやつを信じちゃいけないよ?
  
 仲間だと思ってたら、そんなことは面と向かって口にしないものだからさ。 


 #仲間

Next