あたしには、カップルのあいだにある、赤い糸が見える。左手の薬指と左手に薬指に糸がつながっているか、心と心がつながっているかどうか、小さい頃から見えていた。
他の人には見えないのだ、自分だけの能力なのだと知ってから、口に出さないように気を付けて生きてきた。
あたしの目に赤い糸が映るカップルは、どんなに遠距離になっても、困難が訪れても結局むすばれるし、どれだけ仲良さげなカップルも、それがつながっていなければ最終的に破局した。
怖い力だ。知らなくていいことだって、この世にはあるしね。
でも、いまのところこの能力は消えそうにないし、つきあっていくしかない。
問題は、……
「ん? どうかした? 茜ちゃん」
隣を歩く彼を見上げていたあたしは、はっと我に返る。いつの間にかぼうっと見とれていたらしい。
彼は不思議そうにあたしを見ている。
「ううん、何でもない」
そう言うと、彼はそう?と微笑む。優しい彼。出会った時からずっと。
問題は、自分の左の薬指に、この人とつながる糸が見えないことなんだよねえ。
これが、自分のことは見えない特殊能力「あるある」なのか、それとも、運命のひとではないからなのかーー。見極められないのが目下の悩み。
#心と心
12/12/2024, 9:46:02 PM