【秋風】
少し前までは、温かい風だったのに、いつの間にやら冷たい風に変わった。
寒がりの私には、涼しいどころか寒いぐらいだ。
早く帰ろうと、足早に駅に向かう途中、金木犀の香りが漂ってきた。
だが、駅の周辺には金木犀の木はない。
(そういえば、この近くの公園に金木犀があったような…)
もう少しだけ寄り道をしてから帰ろう。そう思った私は公園へと向かった。
公園には、案の定大きな金木犀が中央に聳え立ち、オレンジ色の小さく可憐な花を沢山咲かせていた。
ゆっくりと歩いて近寄り、そのほんのり甘く優しい香りを堪能する。
「やっぱり好きだなぁ、この香り」
癒やさながら、そんな独り言を呟いた。
すると、後ろから
「相変わらず好きだな、金木犀が…。」
と話しかけられた。
慌てて振り向くと、そこにはこの春から遠距離になってしまった彼氏がいた。
「なんでここにいるの!?」
私は驚きと喜びで、彼氏に詰め寄った。
「ちょうど今戻ってきたんだよ。もしかしたら、ここにいるかもって思って、来たら案の定だ。」
「な、なら連絡してくれれば……」
「サプライズだよ。驚いた?」
彼は少しいたずらっぽく笑いながら言う。
「うん……。でも、会えて嬉しい。」
「俺も会いたかったよ」
そう言って、彼は私を抱きしめた。
創作
昔、天体観測が好きで良く星を見ては星図を記していた。
あの星図は、一体どこに消えてしまったのだろう。
机の引き出しの中、クローゼット、本棚、部屋中のどこを探しても見つからない。
どれだけ探しても出てこない。
誰かが捨てて処分してしまったのだろうか。
もし、そうならとても悲しい。
だって、あれは私だけの物だ。初恋の人がくれた大切な物なのだ。
創作
「ねぇ!愛から恋を引いたら、何になると思う?」
突然、なんの脈絡もなくそう訪ねてきたのは、友達の美月だった。
何とも哲学的で難しい質問に、私は「うーん」と頭を捻る。
愛は相手を思いやる気持ち。恋は下心ある好意で、自分の気持ち。
だとすると。
「情…かな?」
「正解!さすが杏奈!」
「ありがと。でもさ、何で急に、そんな事聞いていたの?」
私が質問を返すと、美月は狼狽え、目を泳がせる。
(これは何かあるな)
そう思った私は、美月に根掘り葉掘り聞き出した。
どうやら、最近、好きな人が出来たらしい。
だから、恋について理解を深めておけば、きっと役立つと思ったのだとか。
なんともいじらしい美月。でも、そういう事なら大歓迎だ! そういうわけで、それからは大いに恋愛トークに盛り上がった。
一次創作 愛ー恋=?
小さい頃、貴方は私に黄色のコスモスを一輪くれたよね。
ちょっと照れくさそうにしながら。
当時の貴方が、その花言葉の意味を知っていたかは分からないけれど、私は、あの時凄く驚いたよ。
だって⋯。
「黄色のコスモスの花言葉は、幼い恋心なんだよ。」
「っ!」
「その花言葉、知ってた?」
「し、知るわけねーだろ!」
私が訊ねると、貴方は慌てて否定する。
けれども、顔は耳まで真っ赤で嘘をついているのが丸わかりだ。
こんな貴方を見たら、嬉しくなってしまうのは仕方がない事だよね。
まさか、貴方が花言葉の事を知ってたなんて思わなかったから。
創作/一輪のコスモス
永遠なんて、ないけれど⋯。
それでも、私は自分の命がある限り貴方と共に居たい。貴方といる、この幸せが永遠(とわ)に続く事を願わずにいられない。
だから、せめて終わりが来るその時までは貴方の側に居させてください。
そんな思いを込めて、セリスは隣に座っているイアンにそっと口づけをした。
「!どうした?」
突然、キスをしてきたセリスを不思議そうに見つめるイアン。
「なんとなく。」
「そうか」
そう言って、イアンは柔らかく微笑んだ。
「セリス」
「はい?」
「愛してる」
「私も。愛してるよ。イアン」
そんな言葉を交わし、二人はまた口づけを交した。
一次創作 魔法王国シリーズ