『1つだけ』
海辺で拾ったシーグラス
一つとして同じものはない
僕の宝物
夏の日差しに反射して
ガラスを通した光が
きらきらと輝いている
僕もこうありたい
光を受けて
ただ純粋に
輝き続けるものに
僕を照らす光が
君だったなら
どんなに嬉しいことだろう
ただ揺蕩っていた僕を
見つけてくれたなら
それはこの上ない喜びだろう
『大切なもの』
子供の時に
祖父からもらった小さな小さなアメジスト
泣く自分に
祖母がくれた和紙を貼った万華鏡
不貞腐れた自分に
母がくれた少し古びたオルゴール
大人になりかけている自分に
父親がくれたシルバーの懐中時計
何よりもそばにいてくれる
家族の存在
それがあるから
僕は今日も
しっかりした足で立っていられるのだ
『エイプリルフール』
「四月馬鹿」
暦にすら馬鹿にされた気がした
くだらない嘘を吐いても良い
そんな日であるものの
どうも浮かぶものがない
君に嘘をつくのも
どこか罪悪感を覚える
そんな中
君が先に嘘をついた
どうしようもないほど
小さな小さな嘘だったが
僕は少し笑ってしまった
そうか
くだらない嘘で
人を笑わせる日でもあるのだと
君の苦笑を見てそう思えた
ならばといくらか気が楽になった
今度は僕の番だろう
君を微笑ませる
くだらない嘘を考えようじゃないか
『幸せに』
楽になる資格など
無いものだと思っていた
全てが自分の蒔いた種なのだと
腐り切った態度で
独り闇を見ている気がしていた
月明かりだけが照らす道で
生暖かな風が吹いた
風の行方に目をやると
蛍が一匹飛んでいた
ヘイケかゲンジかは分からない
心に一つの明かりが灯った
モノクロの闇の中で
何故か彩を感じた
ただ自分のために生きている
蛍が少し羨ましくなった
明日の朝日は怖く無い
それは確信へと変わっていく
キジバトの鳴き始める時刻まで
起きておく必要も無さそうだ
今日はぐっすり眠れそうだ
布団の中で見る夢は
きっと色とりどりだろう
『何気ないふり』
無造作にまとめた髪
急いで準備したものの
まだ日没には早いようだ
「花火を見に行こう」
そう言ってくれた君に
「別に良いけど」と
そっけなく答えてしまった
今も髪を意味なくまとめて
毎年花火を見に行っている
何気なく始まった交流も
今となっては独りよがりで
何気なく横道を見てみると
目を光らせた黒猫が一匹
その眼光は鋭くて
君の眼差しとは別物だったが
その黒猫を追いかけた
そのうちそいつは闇に隠れ
姿が見えなくなってしまった
逃げた先の暗闇に
目が釘付けになっていた
気付けば花火は始まっていて
打ち上がる花火に意識が戻る
帰りの道は
黒猫の後を追ってみよう
何となくだが
黒猫が受け入れてくれる
そう思えて仕方がなかった