傾月(神楽屋)

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9/3/2023, 6:29:54 AM

これはあれだ、落語で聞くあれ、そう『死神』の洞窟。
随分広い洞窟だ。天井も高い。この広い空間に所狭しと例の蝋燭が並んでいる。よく見てみると、それぞれ形や色が違う。何の形か確認するため蝋燭に近付こうとした時、「その線から内側には入らないでください」と背後から声をかけられた。驚き振り向くと、黒いローブを身に纏った背の高いガイコツが立っていた。
え?ブ○ック?思わずそう口に出すと、「あー、やっぱりそうなります?」と困ったような口調でガイコツが言った。よく見るとそれはガイコツではなく、ガイコツのお面を被った何者かだった。「迷い込んだ人間と対峙する時は、素顔を出しちゃいけない決まりでしてね。年に1回、上から面が支給されるんですが、今年自分はこのお面を引き当てちゃったんですよ。すると来る人来る人みんな口を揃えてその名前を出すんですよね」最早どこからツッコんで良いのやら解らず黙っていると、ガイコツは更に話し続けた。「それでも私はまだ良い方で。だってほら、ちゃんと死神っぽいじゃないですか。同僚なんて天狗のとかひょっとこなんですよ。死神関係無いじゃないですか」死神が笑うのを聞きながら、ああ、じゃあきっと会う人会う人みんなに、鱗○さんとか鋼鐵○さんとか言われてるんだろうなぁ、とぼんやりと考えていた。
突然「あ!」と死神が声を上げたので驚き我に返った。何?と聞くと「いやぁ、スミマセン。脱線してしまいました。お前は仕事は真面目で良いがそのお喋り好きが玉に瑕だって、上司にもよく怒られるんです」死神が照れながら頭を掻いている。何の話だ?と不思議に思っていると「えーとですね、その線から内側には入らないでください」と最初に聞いたセリフをもう一度言われた。そうだった、そう声をかけられたんだった。
まるで美術館みたいな声かけだなと思いながら、何故かを死神に問うた。「お察しかと思いますが、これらは寿命の蝋燭です。万が一があってはならないので、線の内側には入らないようにお願いしてます。」なるほど。ついでに蝋燭について気になっていた、形と色のことも訊いてみた。「ああ、それはですね、それぞれの生き物の色形をしています。そちらの白くて丸いのはウサギで、こちらは見ての通りペンギン。向こうの灰色の大きい足はゾウです。」そう言われてみれば、どれも見覚えのあるものばかりだ。
改めて辺りを見てみると、イルカやオウム、ライオンやクラゲ、多種多様な生き物の蝋燭がある。まるで動物園みたいだな、とつぶやくと「その通り!ここは日本死神洞窟の動物園水族館課でございます!」と死神が意気揚々と答えた。
目眩がした。こんなに蝋燭があるのに、動物園水族館だけなのか。呆然としていると「次の洞窟へ行きたい場合はお声かけくださいね」と言われた。一体どれだけの課が、どれだけの洞窟があるのだろう。薄ら寒さを感じながら、ハイヨと小さく返事をした。


―――死神洞窟ツアー [動物園水族館課篇]


                   #61【心の灯火】

9/2/2023, 9:47:26 AM

さて、ここに1台のスマホがある。
私がいつも使っているスマホ。
これが困ったことに、ここ数日LINEが開かない。
・ネットワークの確認
・スマホの空き容量を増やす
・キャッシュを削除
・スマホを再起動
・アプリを再インストール
色々試してみたけど、ウンともスンとも言わない。
あー参った。
気分は最悪だ。
友人や家族には別のSNSで伝えたけど、LINEが使えないのは本当に不便。
でもなんだか、最悪に思う反面、少し身軽になった気もする。
私も含めて現代人って、スマホやSNSに囚われ過ぎなのよね、きっと。
良い機会だから、デジタルデトックスってヤツを試してみようかな。
図書館とか美術館に行って教養を深めてみるとか。
それともハイキングや植物園に行って緑を満喫するとか。
それともそれとも列車で日帰り旅に出るとか。
段々楽しくなってきた。
明日を充実したデジタルデトックスデーとすべく、私は色々調べだした。
こんなにワクワクするの、いつ以来だろう。
たまにはこんなのもありよね。


―――デジタルデトックス


                #60【開けないLINE】

9/1/2023, 11:50:24 AM

この黒い毛玉が妙に賢いヤツだと気付くのに、そう時間はかからなかった。

台風近付く夜に、突然我が家に転がり込んで来たコイツ。はじめましてにも関わらず、何食わぬ顔で毛繕いをし、素知らぬ顔でごはん(この時はキャットフードが無かったから、白米に鰹節をかけただけのもの)を食べ、終いには我が物顔で布団の上に丸まって眠り始めたのだ。
ネコって、こんなに警戒心ないんだっけ?と、これまでの経験値では測れない状況に困惑しながら、ネコを踏まないようにそっと布団に入った。
寝入り端、ふと思い付いたことをネコに言ってみる。「なぁ。今日はお前のおかげで随分夜更かししちゃったんだからさ、明日の朝6時半に起こしてくんないか?一宿一飯の恩義ってやつでさ」すると、眠っていると思っていたネコが、起き上がりひと伸びし、こちらへ近付いてきて座った。しばらく顔を見下されていたように思う。そして、夢うつつの中で、ニャンと短く鳴くのを聞いた。

翌朝、台風一過で良いお天気の外とは反対に、遮光カーテンをひいた室内は薄暗く、まだまだ台風が停滞しているかのようだった。遠くでスマホのアラームが鳴っているのが聞こえる。しかし、ゆうべの夜更かしが祟り、まったく起きられそうにない。ああ、このまま二度寝確定だな…と思っていると、頬に強い衝撃を受けた。
何事かと目を開くと、目の前に黒い毛玉。どうやら、ネコパンチを食らったようだ。まさかと思い時計を見ると何と6時半。「起こしてくれてありがとう。ところでお前、時計が読めるのか?」すると黄色い丸い目でこちらを見ながら、またニャンと短く鳴いた。

人慣れとか警戒心とかのレベル超えてないか?それともオレの常識が間違っていたのか?すでに布団の上で丸くなっているネコを横目に、寝起きの頭でアレコレ考えてみるが全くまとまらない。そうこうしている内に、7時のアラームが鳴り始めた。ヤバイ、遅刻する。そう思い慌てて支度を始めた時に、ふと気付いた。アラームがうるさかったから、止めさせようとしたのではなかろうか。なんだ、そうだよ、ネコに時計が読める訳がない。ようやく真っ当な考えに辿り着き、内心ホッとした。

その考えですら真っ当では無いことに気付くのは、また数日後の話。


―――よるのゆめこそ [アラーム]



                  #59【不完全な僕】

8/31/2023, 9:50:07 AM

良い思い出に昇華出来るまで
まだまだ時間がかかりそう

それまで封印

またいつかお会いしましょう
二度とお会いしない可能性もあるけど♡


―――香りの思い出


                     #58【香水】

8/30/2023, 9:43:12 AM

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―――無言句


            #57【言葉はいらない、だだ…】

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