[洋風ワンプレート] [和風ワンプレート]
・全粒粉パン ・雑穀ごはん
・ジャム ・海苔
・チーズオムレツ ・玉子焼き
・ウインナー ・焼き鮭
・グリーンサラダ ・小松菜のおひたし
・キャロットラペ ・胡瓜のぬか漬
・ミニトマト ・梅干
・オニオンスープ ・ワカメと豆腐の味噌汁
・珈琲 or 紅茶 ・緑茶 or ほうじ茶
さて、どっちが良いかな。
鼻歌交じりで台所に立つ。
タイムリミットは彼女が起きてくる7時。
用意、スタート!
―――口福な[朝]
#31【目が覚めるまでに】
白い壁。壁に窓。窓からは青空が見える。
ここは病院の入院棟。ここは私がいた病室。
随分長い間入院していたように思う。移ろいゆく四季を、いったい何回見送っただろう。
医師が色々と手を尽くしてくれたが治療の甲斐虚しく、私は死んでしまった。
今私は霊安室にいる。顔に白い布をかけられて、斎場に運ばれるのを待っている。
そんな私の亡骸を横目に、わたしは病室まで戻ってきた。そう、わたしは私。わたしは私のいわゆる"幽霊"とか"おばけ"というやつ。本当は、わたしは私の傍にいなきゃいけないような気がするけど。
わたしがここに戻ってきた理由はただ一つ。この窓からの眺めを最後にもう一度見るため。この窓からの見える日によって色の違う空や形を変えながら流れていく雲、極稀に飛んで行く鳥を見るのが好きだった。
想いを馳せつつベッド腰掛け窓から外を眺めていると、後ろのドアが開いた。入ってきたのは担当してくれていた医師。いつも、草臥れた白衣とすっかり履き潰したサンダルで、俯き加減でやってくる先生。
足を止め、目を見開きこちらに向いている。え?わたしが視える?疑問に思っていると、先生がゆっくりと口を開いた。「どうしてここにいるの?」
そこから、何故か解らないけど体を抜け出せたこと、この部屋にもう一度だけ来たかったこと、先生への感謝の気持ちなどを一気に捲し立てた。
先生はそれらを静かに聞いていた。そして「助けてあげられなくてゴメンね」と言った。しかし、今のわたしにはそんなこと、もはやどうでも良かった。死んだ者が蘇ることはないのだから。そんなことよりも、これからどうなっていくのか、それが気になってしかたがなかった。そんなわたしの気持ちを見透かすかのように、先生は言った。「早く自分のご遺体の傍に戻ることをおすすめするよ」
先生が言うには、もうすぐ迎えが来るが、その時きちんと傍にいないと体だけ持って行かれて、取り残されてしまうらしいのだ。「そうやって取り残されて、どこにも行けなくなったのが、いわゆる地縛霊とか浮遊霊ってやつね」そう無表情のまま先生が言う。
何故先生がそんなことを知っているのか不思議だったが、深追いしてはいけない気がして聞けなかった。そして、このままこの部屋に居続けるのも良いかなと思ったが、お世話になった先生や病院に迷惑をかけるのも嫌なので、大人しく私の傍に帰ることにした。
またいつか会えますか?そう言ったわたしに先生は「さぁ、どうだろうね」「でも、もしまた会えたら、その時はお茶でもしましょう」そう言って笑いかけてくれた。
その笑顔が見れただけで満足です!そう言って、わたしは私の傍に帰った。
先生は静かに見送ってくれた。
私の傍に戻ると、見知らぬ人が3人立っていた。葬儀屋さんかな、と思ったがよく解らない。
3人の内の1人が、表に続くドアを開けた。すると目が眩むほどの光が差し込んできた。ああ、これはお迎えだ。わたしは悟った。これでこの世とは本当のお別れ。
またね、先生。まだ来ないでね。でも、いつかまたね。
―――旅立ち[死]
#30【病室】
もし晴れたら何しよう
そんな有りもしないことを考えてみる
考えていると楽しくなってきた
紙とペンを取り出して思い付いたことを書き連ねていく
・洗濯物を外に干す
・布団を外に干す
・傘や合羽を干す
・窓を開けて換気をする
・日光浴をする
・公園に行く
・自転車で遠出する
・ピクニックをする
・バーベキューをする
・キャンプに行く
・花火をする
・海へ行く
・スイカ割りをする
・日焼けをする
・青空を写真に収める
・月や星を見る
…etc.
次から次へと思い付く
そして段々悲しくなっていく
有りもしないことだと解っているから
―――常雨の国
#29【明日、もし晴れたら】
「好き」で一緒になったけど
一緒にいると嫌な所ばかり目について
だんだん「嫌い」が増していく
「嫌い」が増していくと
見る見る内に
心が蝕まれて行くのが解る
心を守るために
会うのは年1くらいが丁度良い
エンカウント率低めのレアキャラ的な
レアキャラだとさ
遭遇した時の嬉しさハンパないよね
大切にするし丁寧に接する
接し方なんてエンカウント率に関わらず
日々丁寧であるべきって思ってるでしょ
でもね「嫌い」な奴相手には無理なのよ
これ以上「嫌い」が増さないために
出来る限り会う回数を減らす
それが心を守る最後の手段
アナタをどんなに愛していても
アナタにどんなに言葉を尽くしても
アナタは決して変わろうとしない
だから
―――理由
#28【だから、一人でいたい。】
ここはきっと夢ん中や。こんなん現実なわけが無い。
どこまでも果てがない、だだっ広い空間。色は見渡す限り白。そこにポツンと「人は」自分1人。
「人は」言うたんには訳がある。人やないもんが同じ空間にいてるから。
大きい眼がこっち見てくる。直径1mくらいの眼球が1つ、宙にプカリと浮いてる。瞳がこっち向いてるから、わたしはこの眼に見られてる、そう判断した。
これはたぶん、人の眼。瞳の色は緑。カラコンってわけやなさそうやから、たぶん外国人。瞼もないから情報は以上。でも何や少し見覚えがある気がする。
さて、どうしたもんか。
眼の後ろがどななってるんか気になって見てみようとしたけど、眼の方もこっちの動きが気になるみたいで、ずっとこっちを見てくる。どんなに走っても走っても、結局、見つめ合ったまんま。
しゃあないから、諦めて寝ることにした。走りまくって疲れたし、もうこれ以上、何もすることないんやもん。
眼に声を掛ける。「疲れたし、わたし寝るわ。アンタのその瞳、めっちゃキレイな。オヤスミ。」
おはようさん。おばあちゃんに声掛けられて目が覚めた。ほら、やっぱり夢やん。
どないしたん、それ。って、おばあちゃんが笑いながら言う方を見たら、布が被せられた箱。その時気付いた。そうや、あの眼、この子やん。
布を取って改めて対面する。キレイな緑の瞳。「ゴメン。わたしが布なんか被せたから、気になって夢ん中まで見に来たんやんな。もうこんなことせえへんから。ほんまゴメン。」「やっぱりアンタのその瞳、めっちゃキレイな。」
おばあちゃんが後ろで、朝ごはんにしよか、言いながらカーテンを開けた。
緑の瞳がこっちに向いてキラリと光った気がした。
―――Bisque doll
#27【澄んだ瞳】