がむしゃらに生きていく内に忘れていたのかもしれない。実家に帰ると当たり前に晩御飯があっておかわりだってある。風呂が炊いてあって、ついでに洗濯するけど?と言われる。
あぁ、自分はこの家で育ったんだと当たり前ながらに気づいていく。そう思えば、ここに居たんだ。足りないピースが一つハマるような納得のいく感覚だった。
まるで愛されている。気付かないくらい当たり前に。
私が彼氏に向ける愛より深くて手厚い。
本物の愛は、いつだって変わることなくここにある。
/true Love(本物の愛)
頭が動かないのは寝起きだからだろうか。
「や、あの、ちょっと、え?」
「そんなに焦るなよ」
そう言って余裕そうに笑う姿と自分の焦り具合の差異に悔しく思う。けれどもそれが自分に向けられている言葉だと思えなくて、脳みそが咀嚼を拒んでいる。
「ちょまって、」
「もうこれ以上、まぁまたいつか、って逸らされたくないんだよ」
相手の目は冗談とは思えないほど本気だった。それは自分が惚れた顔で間違いない。
「それはごめん。よし覚悟決まった。もう一回言って」
そう言えば、相手は柔らかそうに笑ってでも覚悟を決めたように唇を噛み締めた。そして世界で一番好きな笑い方をして、震える声でこう言った。
「俺と、結婚してください」
/またいつか
息苦しい夜にベランダに出てみるとする。誰もいないのに信号機が、一生懸命自分の役目を果たしている姿をみると安心する。
一番光ってる星と一番光ってない星を見比べると安心する。
自分は一番光ってない星を追いかけていたい。周りからは、おかしいと笑われるかもしれない。
それでも劣等感を少しでも和らげてくれる存在が空にあることが嬉しく思う。そんな瞬きをすると見失うほどの静かな星に、私は願いを込めてみたりする。
/星を追いかけて
ほんのり死にたくなる夜が時々ある。
人生が変わるのが怖くて、でも変わらないのも怖かった。どうせ死ぬ勇気もないから生きるという道を選ばざる得ない環境に、選択肢すらも増やせない自分がまた嫌いになった。一生この自分と生きていくのが嫌で、でも今更誰かになりたくもなかった。
自分にとっての「生きる理由」は「死ねない理由」と同義だ。そこに綺麗事はどこにもない。
今を生きることは、死ぬ時間を遅延しているだけに他ならない。
明日のドラマだとか、期間限定スイーツだとか、来月のライブだとか、そういうものを生きがいとよんでみたい。
私もみんなみたいに日常を、テレビを、友達を、推しを、「今を生きる理由」にしたかっただけなのに。
わたしはいつもうまくいかないね。みんなと同じになれないね。
/今を生きる
揺れる木陰がふたつの影を吸い込んだ時、俺は一世一代の勇気を出そうと思う。
/揺れる木陰