久しい友人に声をかけられたはずなのに、目を開けるとそこはソファーの上で、あぁ夢だったんだと理解するのに数秒の時間を要してしまった。
それは、眩しくて楽しくてどこか儚げだった。
真昼の夢はいつもすぐに忘れてしまう。それなのにあの嬉しそうな友人の顔を今も輪郭まで思い出せてしまうのが、私は少しだけ不思議だった。
/真昼の夢
今、目の前に広がる景色があるのならばそれを信じてみても良いと思う。今の時代、含みを持った言い方や見えない部分を察しないといけないような風潮があるけれど、たまには自分の瞳にのみ映る時間を信じてみても良い。
例えば、目の前ののとびきり笑顔や雄大な自然、撫でられた手の体温、携帯の中の文面。
察せなくても、相手の意図を深く読み取ろうとしなくていい。隠されている真実は、無理に知ろうとしなくていい。そこに拭いきれない人間としての味がうまれるのだから。
/隠された真実
その笑い声は、風鈴の音に似ていた。
低い声なのに、笑う時だけキャッキャっと高めの声になる。その音はまるで夏の風物詩で冬でも笑うたびに涼しく感じるから不思議だった。
「はやく歩かないと置いてくぞ」
前を歩く彼がそう言った。風鈴の音に乗せて。
この音を思い出にしないため、自分も笑いながら影を追うのだった。
/風鈴の音
眠る前が好きだった。今日はどんな物語を見せてくれるのだろうと、ワクワクするから。
夢は一体どういう仕組みで出来上がっているのだろう。頭の悪い僕には何にもわからないけれど、学者すらも証明出来ていない事を嬉しく思う。まだ我々には未知な部分がたくさん存在しているのだ。
辛い日々も楽しい日々もある。夢は現実じゃ到底出来ない事ばっかりだ。
まるで心だけ、逃避行。僕は今日も明日を生き抜くために、心だけ逃避行をする。
僕が僕でいるために、逃避行をする。
/心だけ、逃避行
君となら、旅に出てもいい。
その言葉に嘘はなく、そしてそれが不器用なあなたの精一杯だともう分かっていた。
冒険をして、失敗して仮に不幸になってしまっても、君とならそれで良い。
都合の良い解釈かもしれない。拡大解釈ではあるかもしれないけれど、真相は聞かないことにした。夏の暑さが真相を確かめることを、拒んでいるから。
/冒険