やまんば

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8/9/2025, 12:19:46 AM

 その体温も髪の毛も、何度も想像してきた。今もまだ巨人から頬を叩かれて夢だった!なんてあり得るかもしれない。
 けれど、目を開けた君が嬉しそうに微笑むのが全てだった。夢みたいだけど、夢じゃない。俺にとってそれがどれほどの幸福をもたらすか。どうせこんな事を伝えれば、君はよっポエマーとバカにするから言ってやらないけどね。

/夢じゃない

8/8/2025, 7:14:41 AM

 正論は時に暴力だ。効率は時に不正解だ。
 効率や正論だけが全てじゃない。心の中にある迷い、そしてそれを考えるまでの思考を心の羅針盤とする。たまには、東西南北とは書いていないその羅針盤に身を任せてみる。あなたの歩むその先に、大切な仲間が待っているから。

/心の羅針盤

8/6/2025, 12:12:54 AM

 宙を舞う。風の流れに身を任せふわふわと進んでいく。点滴が取れない左手を、不自由に少し伸ばしてその泡に触れる。
 僕だって、泡になりたい。泡になってふわふわと自由気ままに舞って、そしてパチっと消えてしまいたい。
 どうせ今僕が泣いても、背中をさする人は何処にもいないし。

/泡になりたい

8/4/2025, 6:55:32 AM

 コンビニで買ったいつもの炭酸水は今日も無味で安心する。パチパチと口の中で弾ける感覚が喉を通って気持ちいい。
 なにかと嫌味を言うその見失いそうな黒服を、俺はじっと見た。
 ぬるい炭酸と無口なあんたは似ても似つかない。俺の手の中にあるこの炭酸と、俺の手の外にあるこの人は、なんも似ていないのに、あっという間に弾けていなくなる炭酸のような儚さだけは、あまりによく似ていた。

/ぬるい炭酸と無口な君

7/31/2025, 3:49:45 PM

 光が当たる。客席はみんな自分に注目している。私が踊れば、光も踊った。
 人並みより少しだけ長いこと続けた、それだけのことかもしれない。幼い頃から日課のように続けたダンスは、先日終わりを迎えた。
 面倒くさくて休む日も、自主練で汗をかいた日もあった。
 ついこの間までの当たり前は、今ではどう過ごしていたのか思い出せないほど眩しくて、羨ましい。
 私にはもうあの時ほどの熱がないけれど、私を彩る光は、まだ消えずに私の中にいる。

/眩しくて

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