かたいなか

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4/10/2024, 4:05:54 AM

「『誰にも言えない秘密』が6月5日、『誰かのためになるならば』7月26日、『誰もがみんな』が2月10日、『誰よりも』が2月16日なんだわ」
で、今日が「誰よりも、ずっと」。誰5部作かな。
某所在住物書きは過去出題分のお題を辿り、久しぶりの晴れ空を見遣った。
前回と関連付ければ、今回は「ずっと」の2連続。
これからも、誰よりも、これまでずっと隣で。
汎用性の高い「ずっと」は、今後も何度か遭遇することになる。問題はいかにネタの枯渇を防ぐかだ。

「まぁ、『このアプリ利用者の誰よりも、ずっと平凡な現実ネタ連載風』ってのは目指してるわ」
物書きは言った。
「現実をネタに使ってるから、その分ネタの枯渇は比較的少ないが、何度も何度も類似のお題が続くとな」
例えば空ネタ14以上、恋愛系は12以上。
誰よりもずっと恋愛経験ゼロな物書きは、来月7日、きっと「『初恋の日』?知らねぇよ」と嘆くだろう。

――――――

最近最近の都内某所、某職場。
雪降り花溢れる田舎出身の、名前を藤森というが、
3月から己の上司となった緒天戸に、月曜のリモートワークの申請書を提出している。

「月曜だけで良いのかよ」
ふーん。 決裁用に一度手に持った万年筆を、緒天戸は内容を見るなり一度定位置に戻し、
申請書を藤森に返して再提出を促した。

「と、言いますと」
「『お前の親友』の譲久から全部聞いてる。春の20℃で溶けるし、夏の30℃で干上がるんだろう」
「干、……ひ?」

「あと俺の記憶が正しけりゃ、去年の8月2日だ。熱失神でぶっ倒れただろ」
「すいません。……よくご存知で」
「日頃、書類にゃ十分丁寧に目を通してるからな。
上級職の誰よりも、ずっと」

オテント様は見てるんだぜ。覚えときな。
緒天戸はニヨリいたずらに笑い、 で?と一言。
「月曜の予報が最高24℃、火曜と木金が23。
お前来週1日休むだけで干物回避できるのか?」
干物、ひものか。
あいつ、妙なことを吹き込んでくれたものだ。
藤森は緒天戸のいう「譲久」、緒天戸の孫にして藤森の親友たる宇曽野 譲久に、胸中でため息を吐いた。

「夏のように、最低気温の時点で耐えられないわけでもないので。涼しい朝の間に来て、涼しい夜に帰れば、来週は乗り切れると思います」
「リモートだぞ。有給休暇じゃねぇんだ。せっかく整備した制度なんだから、遠慮無く使えよ」
「在宅で捌けない仕事が、少し溜まっています。1週間も休んでしまっては、支障が出ます」

「在宅用に業務の電子化を更に促進しろってことか」
「いえ、そうではなくて」
「アリだな。次の月例で話題に出すか。資料作れ」
「あのですね?」
「じゃあ、夏の雪国休暇と冬の南国休暇か?それな、関東関西民から不満が出て20年前にボツったんだ」
「あの……?」

あっはっは。
緒天戸は笑い、藤森に再提出を促したリモートの申請書が一向に修正されないので、自分からそれを引っ手繰り勝手に日数を追加して、決裁のサインをサラリ。
とんだ職権乱用である。

「せっかくだ。2月まで一緒の部署で仕事してたっつー彼女だか彼氏だか、ともかく恋人と一緒に、ちょっと羽伸ばしてこいよ」
緒天戸が言った。
対して藤森は本日2度目の胸中のため息を吐き、
「あいつは後輩であって恋人ではありません」

「『違う』?」
「確かに、彼女とは誰よりずっと長く、仕事を共にしてはいましたが、先輩と後輩の仲というだけで」
「ウチに先月から入ってきた加元ってやつがお前の元恋人で、そいつが独占欲強火の執着なヤツで、お前とお前の後輩と加元が3人バッタリ会うと修羅場だから、現恋人の後輩を支店に避難させてお前を俺のところに飛ばした、ってハナシじゃねぇのか?」

「なんですそれ」
「『お前の親友』から聞いた」
「宇 曽 野……!!」

4/9/2024, 4:21:04 AM

「1月の『ずっとこのまま』、先月の『ずっと隣で』、今回の『これからも、ずっと』、それから7月の『これまでずっと』。
ずっとシリーズは少なくとも5種類あるんだわ……」
某所在住物書きは去年投稿分を確認した。
雨降る外を眺める。去年はこのような物語であった。
すなわち、「ストレスが過剰な職場に『これからも、ずっと』居続けると、事実としてそのストレスが脳を傷つけるので、転職も手」。
新社会人へ向けた、ひとつのお節介を書いた。
あれから1年である。時は早い。

「1月と先月と今回と7月」
405日続けている物語投稿は、これからも、もう少し続くだろう。 物書きは呟いた。
「少なくとも5種類あるずっとシリーズ、残りの1種類がいつかって?――うん」
去年から何も変更が無ければ次回である。

――――――

雨降る都内のおはなしです。某所某職場、本店某部署のおはなしです。
加元という名前の、男性っぽい女声、あるいは女性っぽい男声の持ち主がおりまして、
先月から転職してきて、その目的が元恋人探し。
8〜9年前に勝手に自分の前から去り、去年やんわり「ヨリを戻すつもりは無い」と言われ、
しかし相手の就職先と所属部署は、しっかり突き止めておったのでした、

が、いざ該当部署に潜り込んでみると、居るはずの相手がおりません。
内線電話のマップも見ますが、すぐ見つかる筈の元恋人の名字がどこにもありません。
だって、「附子山」です。バチクソ珍しい名字です。

おかしい。 実に、 おかしいハナシです。
実は附子山、この加元に心をズッタズタにされたので、合法的に改姓して、それからこの職場に就職しまして、去年まで逃げおおせておったのです。
勿論加元、そんなこと、知るよしもありません。
あら残念。

「本店には、いない」
附子山改姓のトリックを知らず、加元、8つの支店のうち、6支店を巡り終えました。
「探してない支店は、残り2個」
ふたつの支店のうち、「最も来客が多くて忙しい」とされている方に、今日行ってみる予定でした。
ここに「附子山」が居なければ、異動先は最後の「最も来客が少なくてチルい」と評判の支店で決定だと、加元は確信していました。
「……なのになんで、雨降るかな」

濡れる、汚れる、ゴミがつく。加元は自然が大嫌い。
元恋人の居場所まであと少しなのに、雨に雲、風に気圧、最近の悪天候が邪魔をします。
「思い通りにならない。これだから自然は嫌い」


――場面変わって、旧姓附子山の所属部署。
現在上司の緒天戸が、会合で外出しておりまして、実質休憩時間の様相。
「加元、性懲りもなくお前のこと探してるぞ」
旧姓附子山の「旧姓」を知る宇曽野が、ひょっこり遊びに来ておりました。

「最後の支店も探して、『附子山』の名字がどこにも無いと知ったら、あいつ、どうするだろうな?」
それでも、これからもずっと、探し続けると思うか?宇曽野は元附子山、現藤森に、問いかけました。

「これからもずっと、この職場で『私』を探し続けるのは、まぁ確定していると思う」
「だろうな」
「そして近々、付烏月さんの『自称旧姓附子山』のイタズラに引っかかると思う」
「まぁ、それも事実だろうな」

「『附子山の勤務先を突き止めて、先月勤務先に就職してみたら、そこに居たのは自称附子山であって本当の附子山ではありませんでした』」
「『しかも自称旧姓附子山を名乗っていた理由が、「面白そうだったから」でした』」
「……荒れるな」
「荒れるだろうなぁ」

はぁ。
藤森と宇曽野はふたりして、浅いため息をひとつ吐いて、加元の部署があるだろう近辺を見つめます。
恋の執着って、すごいな。ふたりは数秒、あきれた視線で見つめ合い、またため息を吐くのでした。

「なぁ『附子山』。逃げた元恋人をこのままずっと追い続けるって、どんな気分なんだろうな」
「私に聞かれても、分からない。返答が難しい」
「たとえばのハナシだ。たとえばお前のところから、例の後輩が勝手に消えて、行方不明になって」

「宇曽野。それの逆を今、別に恋人でもなんでもないが、まさに私が後輩にしている」
「あっ、」
「先月からここに飛ばされて、異動先を一切知らせていない。あいつ私のこと怒っちゃいないかな……」
「さぁ?俺に聞かれても、それこそ分からんな?」

4/8/2024, 3:36:01 AM

「夜のお題は7例程度あるけど、『朝』と『夕』が付くお題って1〜3例くらいしか無かった記憶」
なんならたしか、「昼」に関してはゼロだったと思う。某所在住物書きはスマホのミュージックライブラリから「沈む夕陽」の曲名を選び出し、リピート再生に耐えている。
某探偵アニメのBGMである。推理曲だったか。
「日」と「陽」の違いこそあれど、去年発見して再生した夜は、開幕1秒で崩れ落ちた。
事件モノでも書くかと。参考文献なら有るぞと。

「『夕日』っていえば、某『環状線と夕日と爆弾』の第一作目とか思い出すな」
物書きは呟いた。
「アレの爆弾処理と列車減速させてくシーン、実際はツッコミどころ満載で全然リアルじゃねぇらしいが、いかんせん鉄道知らねぇ俺としては、あそこカッコイイから、カッコイイからさぁ……」

――――――

呟きックスに「春休み終わった」がトレンド入りして、くもり空の東京の月曜日が始まった。
こちとら春休みなんて数年前に終わっちゃって、
今は「合計で◯週間と△日、休めます!」の有給休暇を半分も使い切れないまま、眼前でピラピラ、権利だけを見せびらかされて仕事をしてる。
仕事仕事仕事。私の休みは一体いつ始まるんだろう。

そういえばTLで社会人に「春休み羨ましいだろ」って噛みついてる高校生がいた。
「休みなのに補習補講と部活で休みの7割登校してたから社会人も学生も変わらん」って反論されてた。
言われてみれば確かにと思う(+αとしてバイト)

「ちなみに付烏月さんって、春休みの思い出とか、バイトでも補講でも何かあったりする?」
「附子山だよ後輩ちゃん。俺、ブシヤマ」
「個人的に警察関係とか探偵とかのバイトしてそうなイメージだけど、どうなのツウキさん」

「なんで俺ケーサツ?」
「事情聴取とかバチクソ正確そうだから。『君の目を見つめると、全部心が分かる』みたいな」
「昨日のハナシ?」
「うん。沈む夕日をバックに、悪い人に『俺の目を見ろ』、『どうやって◯◯さんを?』みたいな」

月曜の職場、昼休憩数分前。
春休み終了にせよ、新年度2週間目突入にせよ、
今年の3月から異動してきた支店はただただチルい。
1時間に1人来るか来ないかも分からないお客さん、支店長とお話するために茶菓子持参で来る常連さん。
ここは優しいお客さんが多い。
本店だと週1でエンカウントしてたモンスターカスタマー様に関しては、まだ1度も会ったことがない。
ただチルい。
あと3月から一緒に仕事してる同僚さん、付烏月さんが持ってくる自家製お菓子が美味しい。

ストレス過多、心労過剰の東京、特に平日において、3月からお世話になってるこの支店は、私にとって心の保健室だった。

「まぁ、表情とか仕草とかを見て犯人の聴取をしたとか、スパイをいっぱい見つけ出したとかってひとは、実際に居るからねー。そのひと本も書いてるし」
「へぇ」
「ちなみにそのひとの本によると、快適なときとか、出会った人や物なんかが好きなとき、人の瞳孔は大きく広がるらしいんだけどね、
これを応用して好きな人とのデートは、明るい朝昼より沈む夕日の時間帯とか、少し薄暗いレストランとかが適してるらしいよん」
「はぁ」

「稲荷神社の近所の茶っ葉屋さんの常連用飲食スペース、個室で明る過ぎない、落ち着いた照明でしょ」
「うん」
「藤森が後輩ちゃんをあそこに誘うの、それが理由」
「マジ?!」
「ウソだよん。多分あいつの場合、あそこの料理とお茶が大好きで気に入ってるってだけだよん」
「……はぁ」

なお夕暮れ時は事故も多いって聞く気がするよ。
安全確認大事だよん。ヒヒヒ。
付烏月さんはイタズラに、無邪気に笑った。
「『好き』に会うと瞳孔が大きくなるってのと、適度に薄暗い方がデートにオススメなのは事実だよ」
付烏月さんは言った。
「それを踏まえて、日も沈んでないし完全真っ昼間だけど、ごはん食べに行かない?バチクソ美味しい米粉ベーグルのお店、昨日見つけちゃってさ」

4/7/2024, 3:34:53 AM

「3月28日に、『見つめられると』ってお題が配信されたばっかりだし、多分『目』にせよ『瞳』にせよ今後何度かお題として遭遇するんだわ……」
先月の「安らかな瞳」に「見つめられると」、それから去年7月の「澄んだ瞳」に「目が覚めると」、あるいは「空を見上げて心に浮かんだこと」。
空ネタのほどじゃねぇが、視覚関係もある程度、このアプリのお題の常連よな。
某所在住物書きは過去のお題を辿りながら呟いた。

視覚は多いのに、聴覚は少ない。
お題の偏りが物書きのネタの枯渇に関与しており、
ゆえに、ある意味それらは「いかに類似のお題を別視点から切り取るか」の訓練になり得ている。
「去年は『君の目を見つめると本当のことを話しづらい』ってネタで書いた」
物書きは言った――今回、どうすっかな。

――――――

今年の3月に忙しい本店からチルい支店に異動になって、早くも1ヶ月と1週間が経過した。

2月29日まで一緒に仕事してた先輩は私と別の部署に異動になって、未だにどこに居るか分からない。
原因は先輩の元恋人さん。
8〜9年前に先輩の心をズッタズタにしたくせに、
かつ、それが元で先輩に逃げられて、去年やんわり先輩から縁切り宣言されたのに、
その元恋人さんが、ウチの職場に就職してきて、それと入れ替わりに先輩と私が異動。
元恋人さんは加元、先輩は旧姓を附子山、今は藤森っていう名前だ。

支店でお仕事するにあたって、先輩のかわりに私とタッグになったのが、「自称旧姓附子山」。
付烏月、ツウキっていうひと。
このひとがとんでもないスキル持ちで、
ともかく自家製スイーツが美味しい、
もとい、人の表情だの脳内だのにバチクソ詳しい。
じっと相手の目を見つめて、順番にケーキの名前を列挙していくだけで、そのひとの好きなケーキだの嫌いなケーキだのを言い当てる。

独学だと付烏月さんは言う。脳科学の応用らしい。
心理学とは、違うのかな。

「視点の違いだろうね〜」
「してん?」
桜満開の東京は、例の感染症が5類に移行してから爆発的に国内外の観光客が増えてきて、
今年は天気も悪いし、宅飲み&宅花見で我慢してる。
久しぶりに先輩のアパートに、お酒とから揚げ棒と塩こんぶ持って遊びに行ったら、
先輩の姿は無く、自称旧姓附子山の付烏月さんがキューブのレモンケーキを作ってた。

から揚げ棒のから揚げと、塩こんぶと春キャベツとスモークサーモンとおしゃれオイルで、即席のおつまみを作ってくれた付烏月さんに、聞いてみた。
『なんで目を見つめるだけで心が分かるの』と。
『脳科学って言ってたけど心理学じゃないの』と。
……視点の違い is なに。

「例えばね、後輩ちゃん」
春キャベツを追加しながら、付烏月さんが言った。
「俺が、君の目を見つめるとする。
『更にミラーリングすると、より好意を引き出しやすいでしょう』、『タッチングは相手に安心感を与えやすいでしょう』。人と人の関係が心理学。
『目を見つめることで、相手も自分もオキシトシンが増えます』、『オキシトシンは、絆の強化にも攻撃性の強化にも繋がるので、場合によっては不快に思われます』。相手の頭の中だけで完結するのが脳科学」

まぁ、独学の付け焼き刃な素人のオキモチだけどね。
付烏月さんはそう言って、私の目を見つめて、
右の唇の端を、吊り上げた。

「俺、今作り笑いしてるよ。どう見える?たとえば、顔の左右でどう違う?」
「右だけ口角上がってる」
「そう。作り笑いは、意識しないと左右の対象性が崩れちゃうことが多いの。脳が意図的に顔の筋肉動かして、本能と違う表情を作ってるから。
特に『本当は嫌いなのに』の『嫌い』は、顔の左側に残りやすいとされてるよん」
「はぁ」

「ちなみに今後輩ちゃんは、『そんなことどうでも良いから塩こんぶキャベ食べたい』って思ってる」
「それも私の目を見つめて分かること?」
「単純にさっきからキャベツちらちら見てるから」

お客様、階下の桜とキンキンに冷えたお酒をどーぞ。
作り笑いを解いた付烏月さんがフッて顔を綻ばせて、冷蔵庫からチューハイとビールを持ってきた。
相手の目を見つめるとして、作り笑いが左右非対称だっていうなら、
きっと今の私は完璧な左右対称のニッコリだと思う。

4/6/2024, 2:45:46 AM

「『星』は今後、複数回のお付き合いなんだわ……」
先月3月15日にも、「星が溢れる」ってお題が来てたわな。あと近いうちに流れ星が来て、数カ月後に「星空」と「星座」なんよな。
星か。某所在住物書きは呟いた。星が複数回、月も2回程度、「空」が付くものはたしか10くらい。すなわちこのアプリにおいて、単純計算として月に1回は星だの空だののネタが来るのだ。
その中でいかにネタを枯渇させずに書ききるか。
物語投稿者には、ひとつの試練と言えよう。

「去年は星を花に見立てて乗り切ったわ」
物書きは言った。
「つまり、星じゃなくて空の方だが、去年やらかしたのよ。『空』のお題に対してストレートに空をメインに据えたハナシ書いて、段々ネタが枯渇して……」

――――――

最近どうも雨ばかりの東京です。そもそも地上が明るくて、「星空の下で」というより「星空を下にして」日々を歩き続けている人間の住む東京です。
LED照明、液晶看板、高層建築へのプロジェクションマッピングに、満開を迎えた桜のライトアップ。
光、ひかり、ヒカリ。東京は、光に溢れています。
そんな最近最近の都内某所、某稲荷神社の昼を舞台に、不思議な子狐のおはなしです。

この某稲荷神社、都内にしては結構深めな森の中にありまして、人間に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益と狐のおまじないをちょっと振ったお餅を売ったり、たまに郵便屋さんごっこをしたり。
昨日は大好きな大好きなお得意様に、お得意様の後輩からのお手紙を届けました。
今日はお得意様の後輩の部屋に、お得意様から後輩へのお返事を届けました。
配達料として貰ったお稲荷さんは、子狐のお気に召したらしく、秒で胃袋に収容されました。

『相変わらず先輩、手紙が報告書か社内文書』
そういえば後輩さん、こんなことを言っていました。
『総務課異動が「当たらずも遠からず」……?』
コンコン子狐、子供だし狐なので「ソームカイドー」を知りませんでしたが、
お稲荷さんのテイクアウトを追加で貰ったので、ぶっちゃけ、気にしませんでした。

さて。
郵便屋さんごっこのひと仕事を終えた子狐です。
テイクアウトのお稲荷さんを手土産に、参拝客ゼロな曇天の神社の敷地内、山桜の咲く木の下で、近所の猫又子猫と化け子狸も呼んで、お花見を始めました。

「総務課っていうのは、給料高い人のことよ」
雑貨屋さんをしている子猫又が言いました。
「お店のまとめ役だもの。きっと、給料いっぱい貰ってるに違いないわ」
今ウチで、新生活応援キャンペーンしてるの。紹介しといてちょうだい。
しっかりものの子猫はニャーニャー、子狐に自分の名刺とお店のチラシを渡しました。

「給料、たかい、」
「総務課だもの。備品の管理とか郵便の仕分けとか、ともかく、すごく大事なことをしてるの。だからいっぱいお金を持ってるのよ」
「ホントかなぁ」
「だって、ウチのゼネラルセクション、社長室の隣にあるもの。間違いないわ」

「ぜねらるせくしょん?」
「正しくはゼネラルアフェアーズだったかも」
「わかんない」
「要するに偉いの。いっぱいお金があるの。今度一緒に営業に行きましょ」

コンコン、ニャーニャー、稲荷神社の子狐と雑貨屋の子猫は2匹して、人知れず、秘密の業務提携。
総務課や庶務課の位置づけは業種によって微妙に違うから、イチガイに「皆給料高い」は難しいんじゃないかなと、化け子狸は言いたそうですが、
結局言葉にできず、口をキュッとして、かわりに温かい狭山茶の2煎目を淹れます。

星空のように満開の山桜は、ホンモノの星のように輝きこそしませんが、薄桃色の5枚花弁を美しく開き、
その下でお花見なり業務提携の密談なりをする子狐と子猫と子狸を、静かに見下ろしておりました。
薄桃の星空の下で宴会ができるのも、あと1週間。
それが終われば東京も、そろそろ春の終わりと夏の始まりの、境界線が見えてくる頃です。

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