開けないLINE#74
夏の終わりを告げられた僕は結局なにもすることなくアイスみたいに溶けた生活を送ってた。
いつだってそうだったけれど暑すぎないかと思うわけよ。
冷房と仲良しで夏休みの宿題だって溶けちゃえばいいのにさ。夏休み中スマホとにらめっこしていたからメッセージだって即レスだったけれど唯一確認できてないLINEがあった。
未読だろうか、既読は付いているかな。それを確認するのが怖い。
もうブロックされているだろうか、もうそれでもいいけど。
僕の開けないLINEはこの夏のエラーにしよう。
また、来年の夏までさよなら。
空模様#73
透明少女は今日も空を見上げて悔しそうな顔をして、曇った空に向かって目を腫らしていた。
夏のせいにしてきたこの気持ちを空模様で表したようなそんな夕の空だった。
涙を噛みしめて必死の笑顔でニッと笑っていた。
僕は隣には立てなそうだなと内心で悔やんで、冬だったなら僕の方を選んでくれたのかなとそんなことを場違いに考えた。
恋の実は苦くて美味しくないことを知った夏の終わり。
終点#72
“十代の終点・一九歳”
気づけばもうこんなに生きたのかと今更ながら振り返ってみるけど何もなくてさ。
大人になる実感なんて湧かないままで、ずっとあの頃の帰りの会で居残りをさせられている気分でさ。
あの頃のあいつは何をしているんだろうかと日の落ちた空へ声を届けてみる。
十九歳の片道切符を握りしめてさ。
二十歳になった自分に託そう十代最後の最後まで。
鐘の音#71
まただ。
あの鐘の音が響いて、忘れていた記憶の蓋が再び開いてしまう。
また九尾に化かされていたのか。
いくら目を擦っても目の前の景色は変わらないけどきっと夢だろう。
だってもう姉さんはいないんだから。
ふと思い出した当たり前のことでじーんときてしまった。
こんなところで泣いていたらお稲荷様に笑われてしまうかな。
病室#70
空っぽになった心と天井から景色の変わらない視界。
もう三週間病室から出ていない。
メンタルと体調は比例しているとかしていないとか。
詳しいことは分からないけれどただ苦しい。
日々を過ごすほど心は幼児退行を繰り返しよく泣くようになってしまった。
入院生活が続けば続くほど病院の外から聞こえる声が遠く響いていた。
この日記を書いてる最中もゆっくり時間は進んでいて気づいたら夜になってたな。
おやすみ今日の私。