yuhi

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3/24/2023, 3:38:42 AM

あなたは特別な存在、と彼に告げる。同じように返してほしいのだけど、彼は「ありがとう」と答えるだけだ。

しびれを切らして、「ほれ、ほれ」と手を動かして催促をする。彼はそれを察して「ああ」と言い、続けた。

「君は、特々別な存在」

「なんか、お得感があるんだけど」と不満を口にしたけれど、

「そりゃあ、君に出逢えた人生だもの、めっちゃ得してるよ」と言うので、悪い気はしなかった。

うまく丸め込まれてる気がするけれど。

3/22/2023, 1:00:32 PM

小説家は原稿を書き上げると、妻に読んでもらうことにしている。

「バカみたいな話だね」

と妻が言ったときは、売れるとき。

「いい話だね」

と言ったときは、売れないとき。

最近は、いい話しか書けていない。

3/19/2023, 11:10:22 AM


「シェフの胸の高鳴りサラダでございます」

とウェイターが前菜のサラダを持ってきた。気まぐれじゃないそのサラダを食べると、確かに、シェフの胸の高鳴りを感じた。

「胸が高まるサラダですね」

と、ウェイターに告げると、

「シェフの娘さんの、出産予定日なんです」とウェイターは答えながら、スープを置いた。

「シェフの胸の高鳴りスープでございます」

きっとデザートまで、高鳴り続けるに違いない。

3/15/2023, 11:57:27 AM

停電が長引いている。明るいうちに復旧する見込みが、夜までずれ込んだ。暇なのでもう寝ようかと思っていたとき、玄関のチャイムが鳴った。

「これ、おすそ分け。いる?」

お隣さんが、両腕に溢れんばかりの星を抱えている。

「ありがとうございます!」

と、それを受け取り部屋に戻ると、たちまち部屋は明るくなった。一つでじゅうぶんなので、他の星は空に投げる。空が瞬くと、誰もが窓から顔を出した。

電気のいらない夜だ。

3/15/2023, 2:00:28 AM

彼の瞳の奥には、湖がある。
ときおり、その水面を魚がジャンプしたりする。

それを見ていると、なんとも安らかな気持ちに、わたしは、なる。

でも彼の瞳に、わたしは映っていない。

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