yuhi

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10/5/2022, 12:24:44 PM

誕生日は? 何型? 好きなミュージシャンは? 映画観る? 本読んでる? 休みの日は何してる?

なんて定形質問を投げかけるが、私とその子はいっこうに盛り上がらない。まあいいか、帰り道、たまたま同じ場所で雨宿りをしているだけだもの。同じ制服を着てるから話しかけただけ。

星座は?

なんだその究極のどうでもいい質問は。と自分でも呆れるくらいで、もう雨宿りをやめて帰ろうかなと考え中である。

乙女座。とその子は答え、いいなー、私は蟹座。乙女座いいよね、カニの中には乙女のかけらもないよ。などと私は投げやりなことを言っている。

乙女座なのに乙女っぽくないんだよね。とその子が言うので、蟹座だからカニっぽかったらやだな。と返す。

あー、そうか、双子じゃないないのに双子っぽいとかもいやだよね。そうそう、魚じゃないのに魚っぽいのもやだ。

やだやだ。やだやだ。

唯一、星座の話だけ盛り上がったところで雨がやんだ。

じゃあ。じゃあ。

その子は乙女っぽい笑顔を向けた。
カニっぽく横歩きで帰ろうとするのは、やめておいた。

10/4/2022, 10:21:49 PM

窓の外の洗濯物が風に吹かれて揺れている。

隣同士の服が袖を取り合った。まるでダンスをしているようだ。靴下やタオルはバックダンサー。

踊りませんか?

と誘われる。

いいえ、わたしはここにいますので。

遠慮をしながら、心はすでに踊っている。

10/3/2022, 10:46:56 PM

恋人との別れを引き摺っていたある日、道端で出会った猫に道を尋ねられた。

道なら猫のほうが詳しそうだけれど、散歩をしていたら迷ってしまったらしい。

ちょうどわたしが向かう方向と同じだったので、ついておいでと猫といっしょに歩き出した。

途中で猫は立ち止まった。
視線の先に別の猫がいる。
あの子に会いたかった、と猫は言った。

あの子に案内してもらいな。

猫はお辞儀をしてそちらへ向かった。

わたしはまたひとりで歩き出した。

10/2/2022, 10:30:42 PM

母の命は持って一週間だと医者に告げられた。
母はそれをわかっているかのように、穏やかにベッドに横たわっている。

来年の桜を見ようよ。

とぼくは言うが、それは奇跡を願うようなものだという想いがめぐってくる。それでも母はいつもと変わらない笑顔になって、「おー、見よう、見よう」と答える。

ぼくは母に否定されたことがない。あったとしても、受け止めてくれてから、「お母さんはこう思う」と言ってくれた。

そんな日々の奇跡が何十年も続き、ぼくは生きてきたのだと思う。あと何を望めばいいのか。

日毎に細くなる母の手を握る。

桜、見たいねぇ。

今はまだ、奇跡の中にいる。

10/1/2022, 11:49:01 PM

たそがれの空がグーを出している。

ぼくはパーを出そうと思ったが、勝った負けたって騒ぐのはなんか虚しいと思った。

すると空はチョキを出した。

ぼくも同じようにチョキを出す。

誰もが平和でありますようにと。 

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