海だ海だ海だー! 海へ行くぞー!
そんな(子供達の)提案の元、家族で海へと飛び出した。
青い空、青い海、白い雲、白い砂浜。
冷たい海水が広がるこの空間は、暑い夏を乗り越える為に用意された絶好の舞台だ(いや海水熱くなってるだろというツッコミはいらない)。
ちゃんと浮き輪にバナナボート、ビーチボールやパラソルなんかも。ありとあらゆる必要な物を用意した。日焼け止めだってばっちりだ。
とうとう車は海へと到着した。
さあ、楽しもう! このきらめく世界を満喫するのだ! 行け、子供達よ!
お父さん? お父さんはいいんだよ。
……だって、泳げないからね!
『海へ』
『愛情の裏返し』ってやつだろ? 知ってる知ってる。
だから俺はいくらでも受け入れる。
君が俺のことを悪く言ったって。
君が俺のことを避けたって。
君がどれだけ俺に素直に接しられなくても、俺はちゃんと許すよ。
でも、他の男と仲良くして気を引こうとするのはやめてほしいな。
そんなことしなくても、俺はもう君のものだから。君には敵わないんだから。
そういえばこの間の返事はまだかな? さすがにそろそろ何か一言くらい欲しいよ。
しょうがないから今日は会って直接話そうか。たまにはこっち見て会話してくれてもいいだろ。
その顔は何だ? その目は何だ? もっと笑えよ。楽しそうにしろ。嬉しそうにしろ。いい加減に、逃げるなんて許さない。いくら愛情の裏返しといっても、少しくらい「愛してる」の言葉を聞かせてくれ。ああわかってる。ちゃんと俺のことを愛してくれていることくらい。だから、俺にそんな態度を取ってしまうんだもんな。
俺は優しいから、いくらでも君を許すし、それ以外の愛情表現してくれるのを待ってあげる。
囚われた君のその表情も嫌いじゃないしね。
『裏返し』
鳥になりたかった。
あの大空を自由に舞う鳥のように。
だから、ひとまず、鳥のコスプレをしてみた。今流行りの映画のキャラクターのコスプレだ。
でも、何か違った。
次に、空を飛んでみようと思って、某鳥人間のコンテストに出場してみた。
近付いた気はしたけれど、これもどうやら違ったようだ。
今度は、じゃあ鳥を観察してみようと、文鳥を飼ってみた。
でも、飼われた鳥は鳥籠の中で、少し行動範囲を広げたとしてもせいぜい部屋の中だけで、あの大空を舞う鳥とは違った。
最後に、鳥の何に憧れたのか考えて、空を飛ぶならこれかと思って、飛行機のパイロットになってみた。
空は飛べたけど、決まった道程ばかりだった。
ある日、飛行機にトラブルが発生した。
必死の対応も虚しく、機体はバラバラになって宙を舞った。
でも、気付いた。
ようやく空高く舞うことができたと。もしかしたら、自分が望んでいたのはこの眺めなのかもしれない。
幽霊になったらもっと自由に大空を舞うことができるだろうか?
地面に叩きつけられる刹那。僕の心は満ちていた。安らかで穏やかな表情をきっとしていた。
『鳥のように』
嫌だ。別れたくない。
まるで今生の別れかのように、君から離れられないでいる。
もう少しだけ、せめてあと10分だけでも。許される限界まで傍にいたい。
どうせ君はすぐに僕のことなんて忘れるんだろう?
さよならを言う前に、お願いだ。
どうか君を抱かせてくれ。
できれば吸わせてくれ。
吸うのが駄目なら肉球ぷにぷにさせてくれ。
それも駄目ならせめて撫でさせてくれ!
とても迷惑そうな顔をした君の頭や首元、体を撫でる。
抱きつこうとすると、両前足でこっちの顔面を押さえつけてきた。激しい拒否の体勢だ。
それでも僕は懲りない。
離れたくない! 独り暮らしの部屋になんか帰りたくない! 持って帰りたい! うちの猫かわいー!!
また帰省してくるまで、僕のこと忘れないでね。
『さよならを言う前に』
君の笑った顔が好きだ。
泣いている顔もいいけど、できれば笑っていてほしい。もちろん、泣いてくれないと困る人もいるだろう。それでも僕はやっぱり、明るく笑っている君が好きだ。
でも、今だけは、ちょっとくらい落ち込んでくれてもいいかも。だって、さすがに暑過ぎるからね。
今日も空は青く澄んで、太陽がにっこりと笑っている。
明日はどんな顔を見せてくれるだろうか。
『空模様』