川柳えむ

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 鳥になりたかった。
 あの大空を自由に舞う鳥のように。

 だから、ひとまず、鳥のコスプレをしてみた。今流行りの映画のキャラクターのコスプレだ。
 でも、何か違った。
 次に、空を飛んでみようと思って、某鳥人間のコンテストに出場してみた。
 近付いた気はしたけれど、これもどうやら違ったようだ。
 今度は、じゃあ鳥を観察してみようと、文鳥を飼ってみた。
 でも、飼われた鳥は鳥籠の中で、少し行動範囲を広げたとしてもせいぜい部屋の中だけで、あの大空を舞う鳥とは違った。
 最後に、鳥の何に憧れたのか考えて、空を飛ぶならこれかと思って、飛行機のパイロットになってみた。
 空は飛べたけど、決まった道程ばかりだった。

 ある日、飛行機にトラブルが発生した。
 必死の対応も虚しく、機体はバラバラになって宙を舞った。
 でも、気付いた。
 ようやく空高く舞うことができたと。もしかしたら、自分が望んでいたのはこの眺めなのかもしれない。
 幽霊になったらもっと自由に大空を舞うことができるだろうか?
 地面に叩きつけられる刹那。僕の心は満ちていた。安らかで穏やかな表情をきっとしていた。


『鳥のように』

8/21/2023, 10:34:30 PM