雨上がりの空にかかる虹は、
君と僕を繋ぐ架け橋のようだった。
共に過ごして20年。
眠るように静かにこの世を去り、虹の橋を渡っていった。
甘えん坊で寂しがり。
いたずらしては素知らぬ顔でとぼけてみせる。
そんな君は、かけがえのない家族の一員だった。
_____もっと一緒に居たかった。
君の温もりが、今も恋しい。
虹の橋の向こうで、君に会えるだろうか。
#虹の架け橋
___ごめん。出来心だったんた。許して欲しい。
送ったLINEのメッセージは既読にならない。
未読無視かブロックか、どちらなのか分からない。
でも、あのときは本当に出来心だった。
感情を表に出さず淡々とする彼女に嫉妬してほしくて
ただ、それだけのつもりだった。
いつからか彼女より浮気相手を優先するようになり、
気づけばそっちに夢中になっていた。
彼女とのやり取りやデートも疎かになって
彼女の存在をぞんざいに扱った。
今の現状はきっとその報いなのだろう。
自分が彼女にしたことが返ってきただけ。
返事が来ないスマホを握りしめながら、俺は項垂れた。
#既読のつかないメッセージ
「もしも世界が終わるなら___何がしたい?」
クッションを胸に抱えてそっと問いかけた。
斗真は、虚を突かれた顔をしてから、ふっと吹き出す。
「突拍子もない質問だね。うーん……そうだな」
顎に手を添えて悩む仕草がどうしようもなく愛おしい。
きっかけは、ほんの少しの好奇心が疼いたから。
斗真が最後に望むものが知りたかった。
「朱莉と一緒にいたいかな」
「……え?」
世界が反転する。
目に飛び込んできたのは白い天井と彼の顔。
戸惑う私を優しい手つきで押し倒し、斗真は何も言わず微笑んだ。
「最後の時まで一緒にいてくれないのか?」
いつもより低い耳に残る声。
滲み出す色気、頬に触れる手の熱さも意識せずにはいられず、呼吸が苦しくなるほどときめいてしまう
何度、私を惚れ直させるつもりだろう。
「……そんな聞き方、ずるいわ。あなたを拒めないって、知ってるくせに」
いつの間にかクッションはベットの端へ。
代わりに私は、斗真の腕の中に閉じ込められる。
今夜は眠れない。
そんな予感が頭をよぎった。
#もしも世界が終わるなら
君とはいつも一緒だった。
冒険したり、秘密基地を作ったり
色々な景色を一緒に見てきた。
たくさんの思い出が積み重なっている。
それらは僕の愛着であり、かけがえのない記憶。
けれど、もう一緒に歩けなくなってしまった。
泥や煤にまみれ底も擦り減った。
何より、僕の足に合わず履くことができない。
だからさよならするんだ。
僕の大事な相棒、今までありがとう。
#靴紐
「答え、聞かせてほしいな」
場に似つかわしくない陽気な声に身を固くした。
声の主は恋人だ。
にんまりと口元を歪め背後から抱き寄せられる。
「あの男、誰なの?」
「っ……とも、だち……」
耳元で囁かれる声に甘い痺れが走る。
逃げなければならないのに、
彼に囚われ逃げられない。
少しでも彼以外をみれば、束縛が強くなる。
「他の男に媚びを売るならお仕置きが必要かな」
「媚なんて売って……っ……!」
「言い訳は必要ないよ」
首筋に立てられた歯は皮膚に食い込み痛みを発する。
逃げようにも体を拘束され微動だにしない。
彼は抵抗など気にもとめず、軽々と抱き上げベッドまで運ばれて押し倒される。
「君は、誰のものかもう一度体に刻み込んであげる」