nanagraph

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1/30/2023, 1:10:20 PM

「あなたに届けたい」

先生が言ってたよ。父さん、春までもたないってさ。

原因はやっぱり癌だって。もう体中に転移しているので、摘出手術も不可能だし、抗がん剤治療も、年齢的に難しいらしいよ。

脊髄にも転移しているので、腰骨の組織がボロボロらしい。腰が痛いのは、そのせいだよ。吐き気とめまいは、がんが脳に転移しているからだよ。

大元は、肺がんだろうって。レントゲン写真を見たけど、肺が真っ白だったもの。水が溜まってるからだってさ。そこから血液に混じって、いろんなところに回ったみたいだよ。

ずっとタバコやめなかったもんね。ツケが回ってきたって笑って言うけど、本当にそうだよ。笑い事じゃないんだよ。

コロナで面会禁止だから会えないけど、家に帰りたいって、ずっと看護師さんに言ってるんだって?あんまり困らせてはダメだよ。

父さんには、感謝しかないよ。

小さい頃、よくハゼ釣りに連れて行ってくれたよね。サッカーの試合にも、よく応援に来てくれたよね。孫が産まれて、私以上に喜んでいたよね。

あまり怒らない人だったけど、一度父さんの財布からお金を盗んで殴られたことは、よく覚えているよ。本気で怒ってくれたよね。いつも本気だったよね。

自分も親になって、その気持ちがよくわかるようになったよ。父さんの本気が、私の子育ての手本だよ。だから私も怒る時も褒める時も、父さんのようにいつも本気だよ。そのことを、父さんから学んだよ。

毎年娘を連れ出して、桜を見に行ってたよね。今年も行こうよ。娘も楽しみにしてるからさ。頑張って行こうよ。車椅子、押してあげるからさ。

元気になってさ、大好きなラグビーを見に、また花園に行こうよ。自慢のギター、聴かせてよ。囲碁も将棋も、またやろうよ。

やりたいことが、やってあげたいことが、いっぱいあるんだよ。まだまだあるんだよ。

早く帰ってきてね。娘たちと待ってるから。

待ってるからね。

1/26/2023, 4:50:33 PM

「ミッドナイト」

私は朝型になりたいんだ。

ミッドナイト。まるで80’sのJ-POPにでてきそうな言葉だと思うのは、私が歳をとったからだろうか。

若いうちは、たいてい夜型だと思う。LINE、Youtube、Tiktok、Netflix などなど、スマホ世代は24時間では足りないようだ。

うちの娘も例外ではなく、スマホに制限をかけなければ、もう無限列車にように突っ走って Youtube を見続ける。そして私は言う。「そんなの毎日24時間365日見ても、終わらんで!早よ寝ろ!」と。

しかしそう言う私も、若い頃は夜更かしばかりしていたので、あまり強くは言えない。

小学生の頃はラジオの深夜放送にはまり、中学生では読書、高校生にもなると、盗んだバイクで走り出すことはなかったが、深夜に部屋を抜け出して、近所の公園でこっそりタバコを吸っていた。大学時代からは一人暮らしを始めたので、明け方寝て夕方起きるような不真面目学生の典型にような生活っだったっけ。

確かに夜は楽しい。静かだし、親は寝ているので、余計な干渉もない。昔は夜中にラブレターを書いて、朝読み返したら赤面ものだったというのがあるあるだったが、夜中というのは、それほど気分が盛り上がる時間帯だったのだ。

今の時代、マッチングアプリで出会って、LINEで別れるを告げるといったところかもしれないので、ドキドキしながら告白とか、こっそり下駄箱にラブレターとか、過去の遺産、それも世界遺産級の話なのだろう。そもそもレターって書いたこともないしと言われそうだし。

社会人になっても、週末なら、終電まで呑んでましたとか、朝までカラオケとか、まだありそうな気がする。昔ほどではないかもしれないが、コンビニもファミレスも24時間営業だ。もう夜に出かけないから知らんけど。

そんな私はというと、社会人になってパワハラと激務で、今はうつ病で休職療養中だ。何も好んで夜型なのではないが、眠れないことが多い。2〜3時間で目覚めてしまう途中覚醒が酷かった時期は、まさに明け方になってやっと眠れるといったことも珍しくなかった。

今は睡眠も多少回復してきており、途中覚醒もほぼなくなった。ただ健全な睡眠が取れているかといえば、そんなことはなく、睡眠導入剤を飲んでいるにもかかわらず、寝つきが悪く、眠りも浅い。睡眠の質でいえば、まだまだ道半ばだ。

できれば規則正しい生活がしたいと思う。眠れずに朝を迎えるのではなく、ぐっすり眠って、朝から活動したいのだ。

早朝も静かだし、家族の干渉もない自由な時間なので、もったいないと思うのだけれど、朝起きれないのだから仕方がない。飲んでいる薬の副作用もあるけど。

早く寝て、早く起きる。そんな普通の生活がしたい。

でも今日もまた遅くなってしまった。現在1:40。薬を飲んでもう寝ることにしよう。

明日もいい日でありますように。




1/18/2023, 2:59:40 PM

「閉ざされた日記」

字がもっと綺麗だったら、手書きの日記もさぞ楽しいだろうと思う。

私は文房具が大好きだ。ペンやノートの類いは、使いもしないくせによく買っているし、ロフトの文具コーナーなら、余裕で半日過ごすことができる。

ただ日記帳は買ってもどうせ書かない、続かないとわかっているので、手をつけないようにしているのだ。

一度ほぼ日を買ったことがあるが、10日ほどで書かなくなってしまった。専用の皮カバーも買ったので、それなりの出費だったが、残念ながら続かなかった。高い買い物をしたらもったいなくて続けるだろうという思惑も、外れてしまったようだ。

毎日やるのが億劫なのもあるが、一番の原因はこの癖字だ。

大人になったら、大人らしい字が書けるようになると思っていたが、それは間違いだったことに、大人になってから気がついた。ていうか、気づいた時にはすでに大人だった。

相変わらずの悪筆で、我ながら見るのも嫌になる。この書く習慣アプリも、手書きだったらやらなかっただろう。

なので昔買ったほぼ日も、開くことはない。まさに閉ざされた日記だ。

ただ綺麗な字には憧れているので、日ペンの美子ちゃんに習うかどうか、私は今、真剣に悩んでいる。

字が綺麗になりたいなぁ。

1/11/2023, 10:29:57 AM

「20歳」

最近私は、時代に取り残されているのではないかと思う。

世の中は、進歩している。昔は当然だったものが今は無いなんてことが、少しずつ、そして確実に増えていっている。

私は先日、久しぶりに、本当に久しぶりに近所のガストに行ったのだが、私はたいそう驚いた。

まず圧倒的に店員さんの数が少ない。少し遅い時間帯に行ったからかもしれないが、見たところホールの接客担当は一人だけで、その人も、客を席に案内するだけのようだった。

なんで?

案内されるがままに席について、まず一つ、疑問が解決した。注文はタッチパネルで行うのだ。一応店員さんを呼ぶためのボタンが各席に設置されていたが、使うことはまずない。一昔前まで店員さんとやりとりしていたことが、タッチパネル上ですべてできるのだ。

そうだよね、そうなるよね。

いつからこのシステムになったのかは知らないが、私はそんなにもガストに来ていなかったのかと、そのことのほうが驚きだった。

注文を済ませてスマホを見ながら待っていると、チャンチャカチャンチャカと、へんてこな電子音が聞こえてきた。なに?なに?私はスマホから顔を上げると、まったく予想もしていなかった出来事に、思わずスマホを落としそうになった。

そこには、へんてこな電子音を鳴らしながら、配膳してるロボットがいたのだ。

わたしは心底驚いた。いや本当に驚いた。工場なんかではすでに FA 化が進んでおり、AMAZONでは、自走式ロボットが工場内を縦横無尽に動き回っていたりするのを、知識として知っていたが、まさかこんな近所のファミレスにロボットが導入されていたとは!

休職してからはほぼ引きこもり状態の私だが、やっぱり外にはでるべきだと少し思った。世の中は、私が思っている以上に進んでいるのだ。

もう一つ驚いたのは、父と回転ずしに行ったときだ。

近所で回転ずしが、新装オープンしたので行ってみたのだが、まず回転ずし屋なのに、寿司が回転していないのに驚いた。でも回転していた当時のレーンは残っている。

注文は、例によってタッチパネルだ。新装前も、注文はタッチパネルだったので驚きはしなかったが、当時配膳レーンの内側にいた職人さんがいない。前は回る寿司の他に、個別に食べたい寿司を注文すると、職人さんがにぎって持ってきてくれたのだ。

確かに回転ずしは廃棄によるロスも多そうだ。すべて個別注文にして、見えないところでロボットが握ったほうが、効率がいいのだろう。最近の円安で、100円寿司が100円ではなくなった今、少しでも利益をだそうとすれば、必然的にこうなるのは仕方がないのかもしれない。

そんな話をしていると、タッチパネルからまたもやへんてこな電子音がなり、「まもなくご注文の品が参ります」と表示される。なに?なに?と思っていると、目の前のレーンが回り、注文した寿司が私たちの席のところでピタリと止まり、手前に押し出されてテーブルの上にやってきたのだ。

なんと、ここにも FA の技術が!どこにセンサーがついているのかわからないが、よくできたものだなあと感心したものだ。

もう回転ずしで、目の前に回ってくるはるか前から狙いをつけていたのに、手前のお客さんに先に取られたなんてこともないのだ。当然、もたもたしているうちに取り損ねたなんてこともない。

その他にも、世の中に普及しているのによくわからないものが多々ある。その中の一つがスマホ決裁だ。えっ?と思われる方がほとんどだと思う。でも私の iPhone6s ではスマホ決裁ができないので、なんちゃら PAY を使ったことがないのだ。いやその前に 6s なの?と言われそうだが、6s なのです。

カードのタッチ決裁も、最近ようやく使えるようになった。それまではいちいちカードを端末に差し込んで、暗証番号を入力していたのだ。今考えればもっと早くカードを切り替えておけばよかったよと思う。

頭の中がアナログな私には、まだまだ知らない便利なものやサービスがあるに違いないと思う。

そして20歳の頃、母にビデオの録画予約のやり方を説明するとき、なんでわからへんの!と思っていたことが、今私の身に起ころうとしている。

そんなこともわからへんの?と、娘に言われる日も近いような気がする。

1/7/2023, 5:53:46 PM

「雪」

私はジョギングで、死にそうになったことがある。

以前、ランニングを趣味にしていたことがある。週に2度は5km走り、週末には10km ほど走る。調子がよければ20km だって、ヘトヘトになりながらも走り切れた。今では考えられないくらい、元気だったのだ。

何事にもまずは形から入る人なので、ウエアの上下は常にNIKE、シューズもNIKEだ。でも気弱な性格の私に、派手なカラーは選べない。上下はいつもモノトーン。蛍光カラーのシューズなんて、なんか速い人が履くイメージがあって、買い換えてもまた黒を選んでしまう。

インナーを着る派なので、吸汗速乾素材のものをいろいろ試してみたし、ソックスもランニング用の、土踏まずにサポートがあるタイプを選んでいた。ただ走るだけなのに、偉くお金のかかる人だった。

その頃はまだ、「いつかはフルマラソン」と思っていたし、頑張って5時間は切りたいと、一人前に目標らしきものもあった。

走れもしないくせに、ランニング系の雑誌を読んで、心肺機能の強化にはインターバル走が必要やなとか、本気で思っていたし、ジェームスに本で教えてもらった通り、ラン前には動的ストレッチ、ラン後は静的ストレッチをやったりもした。

ランニングのラの字も知らないド素人だったが、今でもランニングのラの字しか知らないド素人なので、その辺はあまり進歩していない。

その日は、やたら寒い日だった。

この冬一番の寒気が関西の平野部にも流れ込み、雪の可能性もあった。

いつもだったらコタツで丸くなっていたのだが、その日は走りに行こうと決めていた。なぜなら、セールで新しいアウターを買ってしまったからだ!

ミーハーな私が今回選んだのは、ノースフェイスだ。このアウターはポーラテックという素材でできており、非常に温かい。でも背中にベンチレーション機能がついているので、熱がこもらないという、興味のない人にとっては、なんやそれというアイテムだ。

私は、買ったばかりのノースフェイスを着て、内心ウキウキしながら外に出る。

私の選択に間違いはなかった。気温2℃なのに、思っていたほど寒くない。これならいける!

ただこの時、私は大きなミスを犯していたことに気づいていなかった。

走り始めてすぐに、私はいつもしているネックウォーマーをしていないことに気づいた。私は喘息持ちなので、首を冷やさないようにしないと、すぐ発作が起こるのだ。

でも今日はなんと言ってもノースフェイスだ。温かいし、ジッパーを上まで上げれば大丈夫だろう。そう、私はこの後襲ってくる悲劇のことも考えられないほど、新しいアウターに浮かれていたのだ。

走り始めて2km まではアップ、2〜3km間はスピードアップ、その後はジョグで流しというのが、いつものメニューだった。

2km 地点にきた私は、勢いよく地面を蹴った。ここから3km 地点まで、ほぼダッシュだ。

いくぞ!

私は大きく息を吸い込んだが、これがまずかった。気温2℃の冷気が、一気に気管支を冷やし肺に流れ込んでくる。気管支収縮が起こり、呼吸が苦しくなる。

でもペースを上げたら息苦しくなるのは、ある意味当然で、私は気管支収縮が起こっていることに気づいていなかった。

2〜30mぐらい進んだだろうか。今までに経験したことがないくらいの頭痛とともに、目の前がぐわんぐわんと揺れ、私は走っていられなくなった。

ふらふらになって道端にしゃがみこむと、喘鳴音が聞こえ、呼吸が乱れ、空気を吸えても吐けない状態になってしまった。

やばい、発作だ!

私は、ウエストポーチから震える手で吸入器をつかみ、思いっきり吸った。ステロイドがが喉を通っていくのがわかる。吸入の効果はバツグンだ。即効で気管支が拡張し、発作が治まってくる。

その日はもう走るのをやめて、歩いて帰宅した。怖かった。死ぬかと思った。

ただでさえ喘息持ちにとって、冬はツラい気節だ。過度なトレーニングも考えものである。これからは吸入してから、走るようにしよう。正式な大会にエントリーしているわけではないのでいいだろうと思っていた。

しかしそれから数年後、私は仕事でメンタルが崩壊し、今は休職をしている。その間、一度も走っていない。 

でも冬場、私のカバンの中には、いつもステロイドが入ってる。発作は何もランニング中だけに起こるわけではないからだ。希死念慮があるのに、いざ発作が起きると死にたくないとおもう自分に笑ってしまう。本当は死にたくないのだろう。

ジョギングにような有酸素運動は、うつ病の治療にもいいことが、わかっている。

ただ、もうタイムを追うのはやめだ。ゆっくりしたペースで、ダラダラと走る。無理をせず、しんどければ歩き、吸入器も必要ない。
そんなジョギングなら、してみたいと思う。

いつの日か、また走り出そう。

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