毎年やってくる冬至。
その日は毎回浴槽の中にゆずを入れ、ゆずの香りが漂うお風呂を堪能する。
その日は君ときまって一緒に入ってた。
ゆず風呂のような温かな笑顔を浮かべ、僕に何気ない話をしてくれる君が愛おしかった。
その時間が僕にとって大切なものだった。
仕事の帰り道、ふとほのかに香るゆずの匂い。
その匂いを嗅ぐだけで、今ではいない君が隣にいる気がして、道を歩いているのにお風呂に入っているように感じる。胸が体が、懐かしさで温まる。
気付けばゆずが僕にとって大切なものになっていた。
ゆずの香り
好きな人のことを思うと自分の存在がちっぽけに思えてくる。というより、自分なんて見失ってしまう。
その人が魅力的すぎて、その人しか眼中になくて。
好きな人と話せたり、目が合ったりと、そんな些細なことで機嫌が良くなって、前向きになってしまう。
好きな人による影響は、自分にとって絶大だ。
…だからこそ、傷つきやすくもある。
勇気をだして告白してふられたら、自分の存在意義が分からなくなってしまう。自分の今までのあの人に対する想いはなんだったんだろうって、これからどうすればいいんだろうって。
打ちのめされた時にはよく空を見る。
夜の大空に広がる数多の星々は一つ一つ恒星として光を放っていて、それは何億キロと離れている。
そう考えてると、自分のことがちっぽけに思えてきて、今悩んでいることも馬鹿馬鹿しく思えてくる。
そして告白失敗による苦しさという名の足枷を壊し、僕を前向きにさせる。
だから僕は空が好き
大空
こっから先は、希望か、はたまた絶望か。
それは誰にもまだ分からない。
だが、自分が最初に知ることになるのだろう。
光と闇の狭間で
僕は形のない未来を見つめている
微熱で学校を休んだ時。
恋愛漫画でよくある、好きな人が学校終わりコンビニで適当なものを買ってきて看病しに来てくれないかなって。
いつも思う。
私は大きな国の王女である。
父と母はどちらも美形で綺麗な顔立ちであり、国の王らしく華やかで輝いている衣装を纏っている。
父は母と違って、陽気で明るい性格であり、宴会を開くのが好きだった。
母は父と違って、細くて横に長い美しい瞳をし、静かに佇んで難しい本を読んでいる。
その違った美しさから、
国民の間では、「国の太陽と月」と言われているらしい。
そんな夫婦の間に生まれた私は、父母譲りの顔立ちであった。
両親はそんな自分が大切で何かあると困るため、私をなかなか外には出してくれなかった。
私は陽の光を体いっぱい浴びたいと言っても、
白い肌が美しいわと丸く収められてしまう。
次期王のため王女である私に、何回もよその"私と同じような人"を紹介してくる。
どれもみんな私の姿ばかり。私の外に出たいという願いや、悩みをわかってくれる人なんて現れなかった。
……あの人以外は
どんな有名な国の王子より、私は惹かれた人がいた。
いつものように城内のベランダから外を見ていた時、1人の男の子が見えた。
自分と同じぐらいの歳の男の子は、遠くの私の方を見るなり、男の子の傍にそびえ立つ大樹に飛び乗り登り始めた。随分と高い所まで登った彼は、そこから城内の壁を乗り越え、城内の木にまた飛び移り、ベランダの方まで登ってきた。
私の目の前に来た彼。ついさっきまで城外の遠いところにいたのに、すぐここまで来た。
私は驚いて何も言えなかった。
「ねぇ。一緒に遊ばない?」
彼が不意に聞いてきた。
私がキョトンとしてると、彼が微笑んだ。
「ごめんね。いけないことだとはおもっているんだけど、どうしても誘いたくて。」
「なぜ?」
私は聞いた。すると彼は少し驚いたのか、目を大きく開けた。
「なぜって…。君がとても寂しそうな顔をしていたから。」
!私はその言葉に思わずハッとした。
初めてだ。自分の悩みを、苦悩を分かってくれたのは。今目の前にいる、なんの変哲もない彼が初めて。
「だからさ、一緒に遊ぼうよ。僕が"外"につれていってあげる。」
真夏の季節。ジリジリと照りつける太陽の下、太陽よりも明るい笑顔の君に心奪われた。
太陽の下で