【人は過去を今から知り、未来を今から予測する】
もしも今、未来をみれるなら。
そう願わずにはいられない。
この世界はもう終わりだ。
だったら、遠い未来に自然に還ったこの世界を見てみたいと願うのはおかしくないだろう。
娘は初めて見る都市の外と、人口植物では無い荒れ果てた大地にか細く残る自然に目を輝かせている。
子供のその澄んだ心は、現実を突きつけながらも夢を見させてくれる。
娘の手を離し、乗組員へと任せる。
私も共に行けたらと思わずにはいられないが、それは高望みというものだろう。
せめて娘には、私の様な男よりもいい人間と結ばれて欲しいと願う。
私の他にも、子を見送る親がいる。
だが、それも数える程だ。
この船に乗れるのは、政府の高官などといった上流階級だ。
子供が乗れるのは、次世代の世話係の繋ぎ。
そうと分かっていても、このままこの世界にいるよりも長く生きれるのだから。
時間が許す限り、娘が乗る船を見送る。
⸺今、未来を知っていたなら。
私は娘を船へ乗せなかった。
出立して数時間後、船を建造出来なかった国の攻撃により撃ち落とされた事を知っていたのなら。
【逃げ道無しの神様道】
捧げます。我らが神に。
愚かにも、単独で邂逅しようとした、貴方の信者を名乗る偽物を。
貴方が欲されたので、捧げます。
我らの神よ、貴方は知っている筈だ。
我々の神様への、捧げ物は貴方であることを。
逃げようだなんて、思わないで下さいね。
貴方は我らの神なのですから。
【老いたからこそ、挑戦を】
遥か遠い空から離れ、どれほどの年月が経ったのだろう。この地の底は人口太陽と天井に貼られた偽の空で作られた変わらぬ天気しか無い。
己の背の羽は墜ちた原因の怪我が治ってからは、かつての栄光から程遠く赤子よりも小さくなってしまった。今まで、戻ろうにも確実に戻れる保証が無くなっていたのだ。
地底の住人が嫌いという訳ではない。彼らは気が良いから、離れがたくなってしまうのだ。姿形が違う己にも、偏見無く関わってくれるのも、精神に優しかった。
だが、己はもう老いてしまっている。ならば最期だと思い、以前から見つかっていた大穴から、地上を目指すことにした。
大穴には多くの危険があり、地底の彼らでも安易に手を出せない地だ。だからこそ、いつ死んでもいい今の己は行くのだ。
あの、遠き空へ。
あの、生まれ故郷へ。
雲よりも高き大地へ。
【主と従者(複数形)】
心配しないでください。
貴方は他の誰よりもずっと優れています。
心配しないでください。
周りは貴方に着いていきますし、貴方の言葉を第一に聞きます。
だって貴方は、この場にいる誰よりも偉いお人だから。
貴方と比べれば私たちなんて、”意味が無い”よりも価値がありません。
そうですね、確かにそうです。
同じ顔の人間が数百人いるのは、恐怖心を煽りますよね。でも、大丈夫です。
だってここにいるのは、全て私だから。
いくらでもお使いください、私達の主よ。
【幽霊依存の恋暴走】
昔から、他人には見えない友が居る。
年少に、友が幽霊と呼ばれる事を知った。
年中に、私にしか見えていない事を知った。
年長に、死ぬと友と同じ存在になると知った。
小学生になる頃には、友の存在を隠すようになった。
私だけが知る、私の一番の理解者。
そんな友を、手放したく無いと幼心なりに出した欲望だった。
大人になっても、友が見えなくなることは無かった。
私が辛い時、哀しい時、苦しい時。そのどれにも寄り添い私を励ましてくれた。
そんな存在を■したいと思う様になったのは、魔法使いになってしまった焦りからだろうか?
しかし、そう思った理由はどうでもいいのだ。問題は手段なのだから。
厚い薄い本の世界では無いのだから、手の出しようが無い。そう考えていたが、この問題の解決方法を、何も知らぬ友が教えてくれた。
つまり、入れ物があればいいのだ。
その程度は容易い。ネットで原寸大で駆動、表情変化可能のそれ用の人形を購入し、差し出した。
友は女性の人形であることに文句を言っていたが、数十年ぶりの実体に喜びの笑みを人形の顔に浮かべている。
その表情を見て私は、友を押し倒した。
*
朝。人形の中に友は居らず、周りにも居なかった。
ずっと隣にいると、思っていたのに。
その日以降、友を見ることが無かった私は、友を追って同じ死を迎えた。